ポルトガルの世界遺産・ポルト歴史地区

ポルトガルの世界遺産:ポルト歴史地区 観光・旅行情報まとめ

世界遺産の歴史と登録の概要


首都リスボンから北へ約300km、ドウロ川河口に位置するポルトガル第二の都市ポルトは、ドウロ川北側には大聖堂や教会などの建造物が多く残る旧市街が広がる。

南側のヴィラ・ノヴァ・デ・ガイアと呼ばれるエリアは、ローマ時代はカーレ(Cale)という地名で、港(ポルトゥスPortus:ラテン語で港)として機能していたためポルトゥス・カーレと呼ばれ、この名称がポルトガルという国名の語源となったことから、ポルトガル発祥の地と言われている。

町の歴史は古く、ローマ時代から港町として栄え、8世紀にポルト一帯はイスラム勢力によって支配されるが、11世紀にはフランス貴族によってこの地が奪還される。

この貴族の息子が後の初代ポルトガル国王アフォンソ・エンリケスとなり、ポルトから南に進軍して国土を広げていき、ポルトガルは現在の大きさとなった。

その後は1415年、エンリケ航海王子の指揮のもと、ポルトを出港した船が北アフリカのセウタを攻略し、他国に先駆けてヨーロッパ大航海時代の先陣を切ることとなった。

名実共にポルトガル発祥の地であるポルトの旧市街は、1996年に“ポルト歴史地区”として世界遺産に登録され、2016年にその名称が“ポルト歴史地区、ルイス1世橋およびセラ・ド・ピラール修道院”に変更された。

ポルトガルの世界遺産:ポルト歴史地区

ポルト観光の拠点はリベルダーデ広場


ポルト観光の拠点となるリベルダーデ広場は、ドウロ川北側のサン・ベント駅の北側にあり、ここから500mほど北の市庁舎からドウロ川に架かるドン・ルイス1世橋の間に旧市街の見どころが集まっている。

川で隔てられた町の北側と南側を結ぶドン・ルイス1世橋は上下に通路があり、下の道を渡るとワイナリーが並ぶ川沿いに、上の道を渡ると高台に建つノッセ・セニョーラ・ド・ピラール修道院に行ける。

また、北側の橋のたもとのカイス・ダ・リベイラから高台へはケーブルカーが、南側の川沿いから修道院が建つ高台へはロープウェイが行き来しており、坂の多い町の便利な移動手段として利用されている。

旧市街や南側の見どころは歩いて回れる範囲に集まっているが、郊外まで足を延ばすなら市バスやメトロが便利なので、まずは観光案内所やSTCPの案内所で時刻表や路線図、地図などを入手したい。

観光案内所は北側は市庁舎とカテドラルのすぐそば、南側は川沿いにあり、ポルトの市バスや市電を運行する会社STCPの案内所はサン・ベント駅の構内にある。

現地旅行会社の観光バスツアーに参加する方法もあるが、個人でこれらの交通機関を利用してポルトとその近郊を見て回るなら、アンダンテ、アンダンテ・ツアー、ポルト・カードの購入がお得。

公式サイトはこちら。
Visit Porto(観光案内所)
Metro do Porto(メトロ)
STCP

アンダンテとアンダンテ・ツアーについて


メトロ乗車券アンダンテ(Andente)は日本のSuicaのようなもので、メトロの券売機で€0.50でカードを購入し、券売機でチャージすれば何度でも使える。
カードにはICチップが埋め込まれており、改札口や車内の黄色い改札機にタッチして使用する。

メトロと市バスに利用でき、市バスは乗車時にカードを購入して乗ることもできるが、あらかじめカードにチャージしておいた方が料金が安くなる。

アンダンテ・ツアー(Andente Tour)はメトロ、市バス、ポルト近郊の鉄道が乗り放題のパスで料金は1日券(24時間)が€7、3日券(72時間)が€15。

使用方法はアンダンテと同じで、空港やポルト市内の観光案内所、STCPの案内所で購入でき、1日券はメトロの券売機でも購入できる。

ポルトカードについて


ポルトカード(Porto Card)はメトロ、市バス、ポルト近郊の鉄道の乗り放題と、ポルト市内の主な見どころの入場無料や割引、レストランやショップ、ツアーの割引がセットになったもの。

料金は1日€13、2日€20、3日€25で、空港やポルト市内の観光案内所、サン・ベント駅のチケット売り場で購入でき、購入時にカードを使用する日付、名前、パスポート番号を記入してもらう。

ポルトガルの世界遺産:ポルト歴史地区

ポルト歴史地区の見どころ


クレリゴス教会 Ig dos Clerigos

18世紀に建設されたバロック様式の教会で、高さ76mの塔はポルトガルの教会で最も高い塔。
石段を登ると頂上からは旧市街やドウロ川、その対岸まで見渡すことができる。
クレリゴスの塔の開館は9:00〜19:00、入場料は€3。

公式サイトはこちら。
Ig dos Clerigos

カテドラル Sé do Porto

12世紀に要塞として建設され、その後17〜18世紀に改築されて現在のような大聖堂になった。
内部には美しい銀細工の祭壇、壁に精巧なアズレージョが張られた回廊、宝物館などがある。

大聖堂の開館は9:00〜12:30・14:30〜19:00、入場無料。
回廊と宝物館は9:00〜12:15・14:30〜18:30、入場料は€3。

公式サイトはこちら。
Diocese do Porto

ボルサ宮 Palacio da Bolsa

ボルサとはポルトガル語で証券取引を意味し、ボルサ宮は最近まで“証券取引所”として使われていた。
ポルト商工会の本部として、火災で焼失したサン・フランシスコ修道院の跡地に1834年に建設された。

内部には実際に裁判が行われていた“法廷の間”や豪華な“黄金の間”などがあるが、1番の見どころはアルハンブラ宮殿を模して造られた“アラブの間”で、天井と壁全体に施された美しく豪華な装飾は見事。

内部の見学はポルトガル語、スペイン語、英語、フランス語のいずれかのガイドツアーで所要45分。
開館は4〜11月が9:00〜18:30、11〜3月が9:00〜12:30・14:00〜17:30、ガイドツアーは入場料込みで€8。

公式サイトはこちら。
Palacio da Bolsa

サン・フランシスコ教会 Ig de Sao Francisco

14世紀にゴシック様式で建設された修道院付属の教会で、17世紀にバロック様式に改築された。
内部はターリャ・ドウラーダ(金泥細工)と呼ばれる豪華な装飾で彩られ、天井や壁、柱などは金箔で覆われた彫刻が施されている。

1番の見どころは、左から2番目の礼拝堂にある“ジェッセの樹”というキリストの系図。
また、教会には宗教画などが展示される美術館が併設されている。

開館は3〜10月が9:00〜19:00、11〜2月が9:00〜18:00、入場料は€4。

エンリケ航海王子の家 Casa do Infante

14世紀前半に建設され、19世紀まで関税事務所として使用されていた。
エンリケ航海王子はこの家で生まれたとされているが、真偽のほどは定かではない。

現在は市の文書館として利用されており、中庭と建物の一部が博物館として公開されている。
開館は9:30〜13:00、14:00〜17:30、月曜休みで入館料は€2.20。

ソアーレス・ドス・レイス国立美術館 Museu Nacional Soares dos Reis

ソアーレス・ドス・レイスは19世紀のポルトガルを代表する彫刻家で、1883年に開館したこの美術館には彼の作品のほか、陶器や絵画、日本の南蛮屏風なども展示されている。
開館は10:00〜18:30、月曜休みで入館料は€5。

公式サイトはこちら。
Museu Nacional Soares dos Reis

クリスタル宮庭園 Jardim do Palacio de Cristal

ここは地元民の憩いの場であり、ポルト出身の女子マラソンランナー“ロサ・モタ”の名を冠した屋内競技場、図書館、礼拝堂などがあり、展望台からの眺めはなかなかのもの。
開園は4〜9月が8:00〜21:00、10〜3月が8:00〜19:00、入園無料。


ポルトガルの世界遺産:ポルト歴史地区

ポルトの天気・気候


年間を通じて温暖な気候のポルトガルは、日本の4分の1ほどの小さな国で、地域による大きな気候の違いはないが、南北に長い国のため地域によって若干気温差がある。

日本のように四季があり、夏は晴天に恵まれる乾季、秋から春にかけては雨が多く、不安定な天気が続く雨季となるが、日本の梅雨のように1日中雨が降り続くことはあまりない。

春(3〜5月)

気温は東京の春とさほど変わらず、3〜5月にかけて日増しに暖かくなっていき、5月に入ると最高気温が20℃近くまで上がる日が多くなり、季節は夏へと移り変わっていく。

日中は暖かくても朝晩は10℃以下まで気温が下がるので、薄手の上着があるといいでしょう。
春は比較的雨が多く、1ヶ月に90〜110㎜前後の雨が降るが、日本の梅雨のようにジメジメとはしない。

夏(6〜8月)

夏の平均最高気温は24℃前後で東京の夏より低く、朝晩は15℃前後まで気温が下がるので、暑くて寝苦しさを感じるようなことはあまりないでしょう。
乾季でカラッとした晴天に恵まれ、湿度が低いので日陰に入れば昼間でも涼しく感じるほど。

特に7・8月はほとんど雨が降らず快適で、多くの旅行者で混雑するとはいえ、この時期がポルトガル観光のベストシーズンといえる。

秋(9〜11月)

気温は東京の秋とさほど変わらず、9月はまだ夏の暖かさを感じられるが、11月に入ると日中でも15℃前後までしか気温が上がらず、朝晩は8℃前後まで冷え込み、季節は冬へと移り変わっていく。

また、乾季から雨季への変わり目でもあり、10・11月は1ヶ月に130〜150㎜前後の雨が降る。
晴れている時は過ごしやすいが、1日の中で急に雨が降ったりすぐに止んだりするので注意が必要。

冬(12〜2月)

東京の冬よりは暖かく、平均最高気温は14℃前後、最低気温は5℃前後で、雪はたまに少し降る程度。
しかし、雨季の真っ只中なので雨は多く、毎月170㎜前後の雨が降るので傘などの雨具があると便利。

ポルトの天候グラフ

ポルトガルの世界遺産:ポルト歴史地区 観光・旅行

ポルトの2006〜2007年の天候データ
出典:気象庁ウェブサイト


ポルトガルの世界遺産:ポルト歴史地区

アクセス:日本からの行き方


現在、日本からポルトガルへの直行便はなく、ヨーロッパの主要都市で乗り継いでポルトガルのリスボン空港に向かうのが一般的。
所要は乗り継ぎ込みで17〜20時間ほどで、日本を昼頃に出れば現地時間で同日の夜に着く。

ここからポルト空港までは国内線で所要約1時間で、毎日10便程度フライトがある。
バスでポルトに行く場合は、リスボン市内のバスターミナルまで移動する必要がある。

空港からリスボン市内への移動について

空港からリスボン市内まで約7㎞あり、移動手段は空港バス、地下鉄、タクシーなどがあるが、旅行者が最も利用しやすいのはYellow Bus社が運行する空港バス。

空港バスはAerobusと呼ばれ、空港ターミナル1の到着ロビーの正面が乗り場になっている。
料金は€3.50で、チケットは乗車時に運転手から買うか、到着ロビーの観光案内所で買う。

バス会社公式サイトはこちら。
Yellow Bus

市内へのルートは2つあり、Linha1(City Center)はエントレカンボス、ポンバル公爵広場、ロシオ、コメルシオ広場などを経由しカイス・ド・ソドレ駅へ、Linha2(Financial Center)はエントレカンボス、セッテ・リオス、エスパーニャ広場などを経由しジョゼ・マリア通りへ行く。

Linha2のセッテ・リオスバスターミナルからポルトへのバスがあり、ポルトまで所要3時間30分ほど。
列車の場合は、サンタ・アポローニア駅からポルト行きの列車があり、ポルトのカンパニャン駅やサン・ベント駅まで所要3時間ほど。

通貨と言語とビザについて

通貨はユーロ(Euro)で表記は€、補助通貨はセント(Centimo)で表記は¢。
公用語はポルトガル語だが、観光地にある旅行者向けのホテルやレストランでは英語が通じる所も多い。

シェンゲン協定加盟国であるポルトガルへの入国は、90日以内の滞在であればビザは不要。
パスポートは残存有効期間がポルトガル出国予定日から3ヶ月以上と査証欄の余白が2ページ以上必要。

シェンゲン協定に関しての詳細はこちら
シェンゲン協定加盟国への入国方法

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気候に関してはこちら
ポルトガルの気候と観光・旅行のベストシーズン

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