ポルトガルの世界遺産:コインブラ大学−アルタとソフィア 観光・旅行情報まとめ
この記事の目次
世界遺産の歴史と登録の概要
首都リスボン、ポルトに次ぐポルトガル第3の都市であるコインブラは、文化と学問の町として栄えた。
ポルトガルの歴史に影響を与えた多くの政治家や文化人を世に送り出したコインブラ大学は、1290年に当時のポルトガル国王ディニス1世によって創設された700年以上の歴史をもつ大学である。
最初はリスボンに大学が創立されたが、その後はコインブラに移ったりリスボンに戻ったりを繰り返しながら1537年にコインブラに落ち着き、町はポルトガルの学問の中心として発展していく。
丘の上の大学を中心に町を形成していき、中世のカテドラルや修道院なども多く残されている。
14世紀以降大学として使われている山手のアルタ地区と、16〜20世紀にキャンパスがおかれた下町のソフィア地区が、2013年に“コインブラ大学−アルタとソフィア”として世界遺産に登録された。
コインブラの町について
町は中央を流れるモンデゴ川を境に東側と西側に分けられ、各地からの列車やバスは東側に到着する。
列車でやってくると、多くは中心部から約2㎞離れたコインブラB駅に着く。
ここで連絡列車に乗り換え、市内のコインブラ駅まで所要約5分、徒歩なら30分ほどで着く。
バスは中心部の北西約1㎞のバスターミナルに到着し、市内まで徒歩15分ほど。
また、バスターミナルから通りに出た所からバスに乗れば、コインブラ駅方面に行くことができる。
コインブラ駅から川に沿って300mほど進むと、川に架かるサンタ・クララ橋のたもとに、旧市街の入口にあたるポルタジェン広場があり、一角には観光案内所や市バス(SMTCU)の案内所がある。
この広場から400mほど北の5月8日広場、1㎞ほど北東のレプブリカ広場、この3つの広場を線で結んだ内側に、コインブラ東側の見どころが集まっている。
サンタ・クララ橋を渡り直進していくと、正面に旧サンタ・クララ修道院とその奥にミニ・ポルトガルがあり、ここから左に曲がると涙の館が、直進すると新サンタ・クララ修道院が見えてくる。
町は大きくないので歩いて回ることができるが、時間に余裕がなかったり効率よく見どころを回りたい人は、市バスの利用がオススメ。
コインブラ市内の市バスについて
チケットは乗車時に運転手から買うこともできるが、あらかじめSMTUCの案内所で回数券や1日券を買っておいた方がお得で、路線図や時刻表も入手できる。
チケットは3回券、11回券、1日乗り放題券などがあるので、用途に合わせて購入しよう。
公式サイトはこちら。
SMTUC
コインブラ東側の見どころ
旧大学 Velha Universidade
1290年にディニス1世によってリスボンに大学が創建され、1308年にコインブラに移転された。
現在の大学は新校舎と旧校舎に分かれているが、多くの見どころがあるのは旧校舎の方で、無情の門(Porta Ferrea)をくぐるとディニス1世とジョアン3世の像が建つ中庭に出る。
中庭の一角には18世紀に造られた“カブラ(山羊)”と呼ばれる時計塔があり、右側にはラテン語を話すことが義務づけられていたラテンの回廊(Via Latina)があり、ここから学位授与などの式典が行われた帽子の間(Sala dos Capelos)に入れる。
時計塔に向かって左端にあるジュアニア図書館(Biblioteca Joania)の蔵書は30万冊に及び、内部は豪華なターリャ・ドウラーダ(金泥細工)の装飾が施され、図書館の右側には、壁一面が17世紀のアズレージョで覆われた礼拝堂(Capela)がある。
入場チケット売り場と案内所は鉄の門手前の総合図書館にある。
開館は3/16〜10/31は9:00〜19:30、11/1〜3/15は9:30〜13:00・14:00〜17:30。
入場料は帽子の間とジュアニア図書館などの共通券が€9、時計塔は別途€1。
公式サイトはこちら。
Universidade de Coimbra
新カテドラル Sé Nova de Coimbra
イエズス会のコレジオ付属教会として1598年に建設が開始され、約1世紀をかけて完成した。
バロック様式のファサードが見事で、内部には左右に新古典様式のパイプオルガンがある。
祭壇背後のターリャ・ドウラーダを用いた飾り壁は、17世紀の彫刻家ジェロニモ・ルイスの作品。
開館は9:00〜18:30、日曜は10:00〜12:30、入場料は€1。
国立マシュード・デ・カストロ美術館 Museu Nacional Machado De Castro
コインブラ生まれの彫刻家マシュード・デ・カストロの名を冠した美術館で、かつての司教館を改装して造られた内部には、代表作である“中世の騎馬像”を中心に彫刻や宗教画が展示されている。
地下にはローマ時代の地下堂があり、ところどころに当時の遺物が置かれている。
開館は10:00〜18:00、火曜は14:00〜18:00、月曜休みで入館料は€6。
公式サイトはこちら。
Museu Nacional Machado De Castro
旧カテドラル Sé Velha Coimbra
初代ポルトガル国王アフォンソ・エンリケスによって1162年に建立されたロマネスク様式の教会。
回廊はゴシック様式としてはポルトガルで最も古い13世紀のもので、祭壇奥の飾り壁は16世紀のもの。
かつて内部はスペインのセビーリャから運ばれたイスパノ・アラブのタイルで覆われていたというが、現在はその一部しか残っていない。
開館は10:00〜18:00、日曜は13:00〜18:00、入場料は€2.50。
公式サイトはこちら。
Sevelha Coimbra
サンタ・クルス修道院 Igreja de Santa Cruz
1131年にアフォンソ・エンリケスによって建立され、16世紀にマヌエル1世が改築して現在の姿になった。
本堂左側の説教壇は、ニコラ・シャンテレーネによるポルトガル・ルネッサンス彫刻の傑作で、祭壇の両側にはアフォンソ・エンリケスとその息子サンショ1世の墓がある。
修道院内はマヌエル様式の回廊(Claustro)、聖器室(Sacristia)、参事会室(Capituro)などが見学できる。
開館は平日が9:00〜17:00、土曜が9:00〜12:00・14:00〜17:30、日・祝日が16:00〜17:30。
入場料は教会が無料で、修道院は€2.50。
公式サイトはこちら。
Igreja de Santa Cruz
植物園 Jardim Botânico da Universidade de Coimbra
一般人に公開されたコインブラ大学付属の植物園で、地元民や旅行者の憩いの場となっている。
敷地内にはヤシの木から針葉樹まで幅広い植物が生い茂り、季節の花々が彩りを添えている。
開園は4〜9月は9:00〜20:00、10〜3月は9:00〜17:30、入園無料。
コインブラ西側の見どころ
旧サンタ・クララ修道院 Mosteiro de Santa Clara a Velha
1286年に建立され、かつてはコインブラの守護聖人イザベル王妃の棺が安置されていたが、度重なるモンデゴ川の洪水により17世紀に閉鎖された。
その後は廃墟と化していたが、長い改装工事を経て2009年に修復が完了した。
開館は4〜9月が10:00〜19:00、10〜3月が10:00〜17:00、月曜休みで入場料は€5。
公式サイトはこちら。
Direcção Regional de Cultura do Centro
ミニ・ポルトガル Portugal dos Pequenitos
ポルトガル国内の有名な建造物や各地方の伝統的な建物をミニチュアサイズで再現した公園。
入口付近には旧植民地であるマカオ、ブラジル、アンゴラ、モザンビークなどに関する展示がある。
開園は6/1〜9/15は9:00〜20:00、10/16〜2/28は10:00〜17:00、9/16〜10/15と3/1〜5/31は10:00〜19:00。
入園料は€9.50。
公式サイトはこちら。
Portugal dos Pequenitos
新サンタ・クララ修道院 Mosteiro de Santa Clara a Nova
洪水の被害を受けた旧修道院の代わりに、17〜18世紀に小高い丘に新しく建てられた修道院。
祭壇にはイザベル王妃の棺が安置され、修道院の前にはイザベル王妃の像が建つ。
開館は9:00〜18:45、土・日・祝日は9:00〜18:00、入場料€2、展望台は別途€3。
涙の館 Jardins da Quinta das Lágrimas
イネス・デ・カストロが暮らしていたとされる館で、裏の庭園にイネスとペドロ王子が愛を語らったという“恋人たちの泉(Fonte dos Amoras)”が、その奥に“涙の泉(Fonte das Lagrimas)”がある。
開館は10:00〜19:00、月曜休みで入館料は€2.50。
ペドロ王子とイネス・デ・カストロの悲恋物語について
父の言いつけでカスティーリャ王国のコンスタンサ姫と結婚したペドロ王子は、侍女のイネス・デ・カストロと恋に落ちてしまうが、そのことが国王に知れてふたりは引き離されてしまう。
コンスタンサが亡くなると、ペドロ王子はイネスを側室にし、3人の子供を授かる。
しかし、カスティーリャ王国の圧力を恐れた国王と家臣によってイネスは殺されてしまう。
涙の泉はイネスがのどを切られて殺されたいわれる場所で、泉の底にある赤い石はこの時にイネスの血で染まったものだという。
やがてペドロが王位の座に就くと、亡きイネスを正式な妻として教会に認めさせ、殺害に関わった者は全て処刑したという。
ペドロの遺言により、ペドロとイネスの棺はアルコバサ修道院に一緒に安置されている。
コインブラの天気・気候
年間を通じて温暖な気候のポルトガルは、日本の4分の1ほどの小さな国で、地域による大きな気候の違いはないが、南北に長い国のため地域によって若干気温差がある。
日本のように四季があり、夏は晴天に恵まれる乾季、秋から春にかけては雨が多く、不安定な天気が続く雨季となるが、日本の梅雨のように1日中雨が降り続くことはあまりない。
春(3〜5月)
気温は東京の春とさほど変わらず、3〜5月にかけて日増しに暖かくなっていき、5月に入ると日中は20℃を超える日が多くなり、季節は夏へと移り変わっていく。
日中は暖かくても朝晩は10℃前後まで気温が下がるので、薄手の上着があるといいでしょう。
3・4月は比較的雨が多く、1ヶ月に80㎜前後の雨が降るが、日本の梅雨のようにジメジメとはしない。
夏(6〜8月)
夏の平均最高気温は28℃前後で東京の夏より低く、朝晩は17℃前後まで気温が下がるので、暑くて寝苦しさを感じるようなことはあまりないでしょう。
乾季でカラッとした晴天に恵まれ、湿度が低いので日陰に入れば昼間でも涼しく感じるほど。
特に7・8月は全くと言っていいほど雨が降らず快適で、多くの旅行者で混雑するとはいえ、この時期がポルトガル観光のベストシーズンといえる。
秋(9〜11月)
気温は東京の秋とさほど変わらず、9月はまだ夏の暖かさを感じられるが、11月に入ると日中でも20℃を超える日は少なくなり、朝晩は10℃前後まで冷え込み、季節は冬へと移り変わっていく。
また、乾季から雨季への変わり目でもあり、10・11月は1ヶ月に100㎜前後の雨が降る。
晴れている時は過ごしやすいが、1日の中で急に雨が降ったりすぐに止んだりするので注意が必要。
冬(12〜2月)
東京の冬よりはるかに暖かく、平均最高気温は16℃前後、最低気温は9℃前後で、雪が降ることはほとんどない。
しかし、雨季の真っ只中なので雨は多く、毎月100㎜を超える雨が降るので傘などの雨具があると便利。
コインブラの天候グラフ
アクセス:日本からの行き方
現在、日本からポルトガルへの直行便はなく、ヨーロッパの主要都市で乗り継いでポルトガルのリスボン空港に向かうのが一般的。
所要は乗り継ぎ込みで17〜20時間ほどで、日本を昼頃に出れば現地時間で同日の夜に着く。
空港からリスボン市内への移動について
空港からリスボン市内まで約7㎞あり、移動手段は空港バス、地下鉄、タクシーなどがあるが、旅行者が最も利用しやすいのはYellow Bus社が運行する空港バス。
空港バスはAerobusと呼ばれ、空港ターミナル1の到着ロビーの正面が乗り場になっている。
料金は€3.50で、チケットは乗車時に運転手から買うか、到着ロビーの観光案内所で買う。
バス会社公式サイトはこちら。
Yellow Bus
市内へのルートは2つあり、Linha1(City Center)はエントレカンボス、ポンバル公爵広場、ロシオ、コメルシオ広場などを経由しカイス・ド・ソドレ駅へ、Linha2(Financial Center)はエントレカンボス、セッテ・リオス、エスパーニャ広場などを経由しジョゼ・マリア通りへ行く。
Linha2のセッテ・リオスバスターミナルからコインブラへのバスがあり、所要2時間30分ほど。
列車の場合は、サンタ・アポローニア駅からコインブラ行きの列車があり、コインブラB駅まで所要2時間ほど。
通貨と言語とビザについて
通貨はユーロ(Euro)で表記は€、補助通貨はセント(Centimo)で表記は¢。
公用語はポルトガル語だが、観光地にある旅行者向けのホテルやレストランでは英語が通じる所も多い。
シェンゲン協定加盟国であるポルトガルへの入国は、90日以内の滞在であればビザは不要。
パスポートは残存有効期間がポルトガル出国予定日から3ヶ月以上と査証欄の余白が2ページ以上必要。
シェンゲン協定に関しての詳細はこちら
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