ペルーの世界遺産:クスコ市街 観光・旅行情報まとめ
この記事の目次
世界遺産の歴史と登録の概要
ペルーの首都リマの南東約570kmに位置し、アンデス山脈の標高約3400mという高所に築かれた都市クスコは、かつてはインカ帝国の首都として栄華を極め、クスコとはケチュア語で“へそ”を意味する。
11〜12世紀頃に築かれたクスコがインカ帝国の首都として機能し始めたのは15世紀前半、第9代皇帝パチャクティの時代で、街には“カミソリの刃も通さない”といわれる重厚な石組みの上に神殿や宮殿が造られ、インカ帝国の中心として発展していった。
しかし1533年、スペインの侵略によって第13代皇帝アタワルパが捕らわれ、首都クスコが奪われると、クスコの街は一部の石組み以外は徹底的に破壊され、ついにインカ帝国は滅んでしまう。
スペインからの侵略者達は、残ったインカ時代の石組みを土台として利用し、カトリックの教会や修道院、カテドラルなどを建設し、クスコの街をスペイン風に変えていく。
その後は3回の大地震に見舞われながらも街は発展していくが、皮肉なことに、スペイン人が建築したものは地震のたびに大きなダメージを受けたが、インカ帝国時代の石組みはびくともしなかったという。
このように、クスコには優れた文明を築いたインカ帝国時代とスペイン征服後の建造物が多く残されており、2つの文化が混在した独特の町並みは“クスコ市街”として1983年に世界遺産に登録された。
クスコ市街観光の拠点はアルマス広場
クスコの中心地であり、観光の拠点となるアルマス広場。
広場に面してカテドラルやラ・コンパニーア・デ・ヘスス教会などが建ち、ホテルやレストラン、観光案内所や旅行会社、博物館などもこの辺りに集中しているため、市内であれば徒歩でも十分観光できる。
街の南側には駅があり、アルマス広場からこの駅に向かって延びるエル・ソル通り(Av.El Sol)がクスコのメインストリートで、いつも地元民や旅行者で賑わっている。
街の北側にはサン・クリストバル教会が建つ小高い丘があり、クスコの町並みを一望できる。
ここからさらに北に進むとサクサイワマン、ケンコー、プカ・プカラ、タンボ・マチャイといったインカ時代の遺跡が残されている。
クスコ周遊入場券(Boleto Turistico del Cusco)について
クスコ観光に便利なこのチケットは、クスコ市内と近郊の全16ヶ所の遺跡全てに入場できる共通チケットと、これらの遺跡を3つのエリアに分けて、1つのエリアの遺跡のみ入場できるチケットの計4種類のチケットが販売されている。
すべての遺跡に入場できる共通チケットを購入するのが一般的だが、時間の都合などで特定のエリアのみを観光する場合は、その目的にあったチケットを購入した方がお得である。
チケットはアルマス広場の観光案内所、広場からエル・ソル通りに出てすぐの所にあるチケットオフィス(Cosituc)、最初に入場する遺跡や施設で購入できる。
公式サイトはこちら。
Cosituc
チケットの種類と値段は下記の通り。
- 周遊券(BTCI) 料金はS/.130(学生はS/.70) 10日間有効
クスコ市内と郊外の全ての遺跡に入場できる。 - 周遊券1(BTCI1) 料金はS/.70 当日のみ有効
クスコの北にあるサクサイワマン、ケンコー、プカ・プカラ、タンボ・マチャイに入場できる。 - 周遊券2(BTCI2) 料金はS/.70 2日間有効
クスコ市内のコリカンチャ博物館と、クスコ郊外南側のティポン、ピキリャクタ遺跡に入場できる。
(南の谷巡りといわれるルート) - 周遊券3(BTCI3) 料金はS/.70 2日間有効
クスコ郊外北側のピサック、オリャンタイタンボ、チンチェーロ、モライに入場できる。
(インカの聖なる谷巡りといわれるルート)
南の谷巡りとインカの聖なる谷巡りのルートは交通の便が良くなく、それぞれの遺跡がクスコから100㎞圏内という広範囲に点在していることから、ツアーで回るのが一般的である。
日本語が通じる現地の旅行会社はこちら。
Mickey Tour Cusco
America Tours
宗教施設周遊券(Crcuito Religioso Arzobispal)について
クスコ市内のカテドラル、サン・ブラス教会、サン・クリストバル教会、宗教美術博物館の4ヶ所に入場できる共通チケットで、料金はS/.30(学生はS/.15)でカテドラルか宗教美術博物館で購入できる。
クスコ市街の見どころ
カテドラル(クスコ大聖堂)
アルマス広場に面し、インカ帝国時代のビラコチャ神殿の跡地に建てられたこの大聖堂は、1550年に建設が始まり、完成までに約100年を費やしたクスコのシンボル的な存在。
内部には400を超える宗教画があり、最も有名なのは画家マルコス・サパタが描いた“最後の晩餐”。
そして約300トンの銀を使用したメインの祭壇は一見の価値あり。
屋根には40km先まで響き渡るという、南米で1番大きな鐘がある。
また、カテドラルに祭られている褐色の肌のキリスト像は地震の神として崇められている。
開館は10:00〜18:00、入場料はS/.25。
ラ・コンパニーア・デ・ヘスス教会
アルマス広場に面し、かつてのインカ帝国第11代皇帝ワイナ・カパックの宮殿跡に建てられた教会。
現在の教会は1650年の大地震の後に建てられたもので、マルコス・サパタが描いた立派な壁画と豪華な祭壇がある。
開館は9:00〜17:30、入場料はS/.10。
ラ・メルセー教会・修道院
アルマス広場のすぐ側にあり、ドーム型の屋根をした塔が特徴的な教会と、24本の柱とアーチに囲まれた美しい修道院が併設されている。
回廊には宗教画が描かれ、1番の見所はクストディア(Custodia)といわれる聖体顕示台。
高さ1.2mの台の上に純金22kg、ダイヤモンド1517個、巨大な2つの真珠と615粒の真珠トパーズやルビーなどで飾り付けられている。
開館は8:00〜12:00、14:00〜17:30、日曜休みで入場料はS/.10。
サン・フランシスコ教会/修道院
アルマス広場の西に位置し、サン・フランシスコ広場に面して建つ、厳格な雰囲気が漂う教会と修道院。
見どころは修道士達を描いた12m×9mの壁画と、人骨で造られた燭台がある祭壇。
開館は9:00〜12:00、15:00〜17:30、土曜は9:00〜12:00のみ、日曜休みで入場料はS/.5。
サン・ブラス教会
アルマス広場の北東に位置する小さな教会。
美しい装飾の祭壇と、地獄界、人間界、天上界を表現した彫刻が見事な説教壇(Pulpito)が見どころ。
開館は8:00〜18:00、入場料はS/.10。
サント・ドミンゴ教会/修道院・太陽の神殿(コリカンチャ)
アルマス広場の南東に位置し、インカ帝国時代は太陽の神殿だったが、スペイン人の征服者によって神殿の上部が破壊され、残った石組みの土台の上にサント・ドミンゴ教会が建てられた。
その後、大地震によって教会は崩れ落ちたが、土台部分の石組みはビクともしなかった。
その精巧で美しいインカ帝国時代の石組みは見事。
開館は8:30〜17:30、日曜は14:00〜17:00、入場料はS/.10。
クスコ市街の博物館はこちら
- 宗教美術博物館
「12角の石」「14角の石」がはめ込まれた石段の上に建てられた旧大司教庁。
かつてはインカ帝国第6代皇帝インカ・ロカの宮殿だったが、スペイン人が宮殿を壊し邸宅を建てた。しかし、その邸宅は1590年の地震で倒壊し、現在の建物はその後に建てられた。
館内には300年以上前に使用されていた家具が置かれ、金箔の祭壇や彫刻の扉などが展示されており、中庭には噴水がある。開館は8:00〜18:00、入場料はS/.10。
- インカ博物館
かつての海軍提督ドン・アルドレッテ・マクドナルドの邸宅で、17世紀前半に建てられたコロニアル調の建物。館内は展示品の年代ごとに部屋が分かれており、陶器や織物などその時代の様々なものが展示され、クスコ周辺で発見されたミイラやマチュピチュのジオラマもある。
開館は8:00〜18:00、土・祝は9:00〜16:00、日曜は休みで入場料はS/.10。
- サンタ・カタリナ博物館
サンタ・カタリナ修道院内にある博物館。
館内はキリストや聖母マリアの宗教画で埋め尽くされている。開館は8:30〜17:30、日曜は14:00〜17:00、入場料はS/.8。
- カサ・コンチャ博物館
マチュピチュ遺跡を建造したインカ帝国第9代皇帝パチャクティの息子の宮殿の跡地。
陶器、織物、日用品などのマチュピチュ遺跡からの出土品が展示されている。開館は9:00〜17:00、日曜は休みで入場料はS/.20。
- プレコロンビーノ博物館
ペルーのコンチネンタル銀行が運営する博物館。
スペイン征服以前の装飾品、土器、彫刻などが展示されている。開館は8:00〜22:00、入場料はS/.20。
クスコの天気・気候
シエラ(山岳地帯)に属するクスコの気候は、乾季と雨季に分かれる。
4〜10月は乾季で過ごしやすい時期だが、1日の中の寒暖差が大きい。
日中は日差しが強く気温も上がるが、朝晩はかなり冷え込む。
11〜3月は雨季で雨が多くなり、豪雨に見舞われることもあるが、乾季よりは少し暖かい。
標高約3399mのクスコの気温は年間を通じて変化が少なく、平均最高気温は常に18〜20℃。
最低気温は雨季は6℃前後だが、6〜8月は0℃以下まで冷え込むことがあるので、この時期にクスコを訪れるには防寒着が必要になる。
雨季のクスコの降水量は1ヶ月に100〜150㎜ほど。
クスコ観光のベストシーズンは、雨の降らない乾季といえる。
また、クスコは標高が高いので高山病に注意が必要。
クスコの天候グラフ
アクセス:日本からの行き方
現在、日本からペルーへの直行便は無いため、アメリカの都市を経由してリマのホルヘ・チャベス国際空港に向かうのが一般的で、所要時間は22〜25時間ほど。
他にもカナダやメキシコ、ヨーロッパの各国を経由する便もあるが、ヨーロッパ経由の場合は所要時間は30時間以上かかる。
また、アメリカを経由する場合は事前にESTAを取得する必要がある。
ESTAに関しての詳細はこちら。
アメリカへの入国とESTA申請・取得方法
リマからクスコへの移動について
リマからクスコへの移動は長距離バスか飛行機のどちらかになる。
飛行機の場合は、ホルヘ・チャベス空港から国内線で、クスコのアレハンドロ・ベラスコ・アステテ空港まで所要1時間30分ほどで、この路線は1日に20便近く運行している。
長距離バスの場合は、リマからクスコまで所要21〜22時間で、各バス会社が毎日1〜3便運行している。
また、これらのバスはリマ市内の各バス会社のオフィス前から発着することが多いため、空港から市内までタクシーやシャトルバスを利用して移動する必要がある。
空港からのタクシーやシャトルバスは24時間運行しており、空港内に受付カウンターがある。
バス会社公式サイトはこちら。
cruz del Sur
Oltursa
Transportes Linea
Civa
Busportal(バスチケットブッキングサイト)
空港やバスターミナルからクスコ市内へ移動について
空港からクスコの中心部までは約4㎞あり、タクシーで10〜20分ほど。
料金は、空港内で待機している高級なタクシーだとS/.35、ターミナルを出た所で待機しているタクシーだとS/.15、敷地の外の流しのタクシーだとS/.6〜10程度。
バスターミナルからクスコの中心部まではタクシーで5分ほどで、料金はS/.4〜6ほど。
通貨と言語とビザについて
ペルーの公用語はスペイン語だが、観光地などでは英語が通じる所も多い。
通貨はソル(Sol)と補助通貨のセンティモ(Centima)があり、略号はS/と¢。
ペルーの通貨は2015年12月15日に、それまで流通していたヌエボ・ソル(Nuevo Sol)からソルに変更されたが、旧通貨であるヌエボ・ソルも使用できる。
また、観光地などではUSドルも流通している。
ペルーへの入国は、観光目的あれば最大183日までの滞在ならビザ不要。
基本情報はこちら
ペルーの基本情報-時差、言語、人口、宗教、首都、飲料水など
気候に関してはこちら
ペルーの気候と観光・旅行のベストシーズン
ペルーのその他の世界遺産についてはこちら
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