ハンガリーの世界遺産・ドナウ河岸とブダペスト

ハンガリーの世界遺産:ドウナ河岸,ブダ城地区及びアンドラーシ通りを含むブダペスト 観光・旅行情報まとめ

世界遺産の歴史と登録の概要


ハンガリーの首都ブダペストは、街の中央を南北に走るドナウ川を境に、西岸のブダ、東岸のペストとで大きく異なった景観が広がっているが、かつてブダとペストはそれぞれ別の町だった。

13世紀、ハンガリー王国の都となったブダに城が築かれると、15世紀には城がルネッサンス様式に改築されて栄華を極めたが、その後はオスマン帝国の侵攻、ハプスブルク家の支配などの苦しい歴史を刻みながらも発展していく。

1849年にドナウ川にくさり橋が架けられると、川で隔てられていたブダとペストは結ばれた。
そして1873年、ブダの北側の町オーブダ、ブダ、ペストの3つの町が統合されてブダペストとなった。

美しい街並みのブダペストには歴史的な建造物が多く残されており、1987年にはドナウ河岸とブダ王宮地区が、2002年にはアンドラーシ通りとその周辺が世界遺産に登録され、現在は“ドウナ河岸,ブダ城地区及びアンドラーシ通りを含むブダペスト”として合わせて世界遺産に登録されている。

ハンガリーの世界遺産:ドウナ河岸とブダ城地区とアンドラーシ通りとブダペスト

ブダペストの町について


ブダ、ペスト、オーブダの3つの地区からなるブダペストの見どころは、ドナウ川に架かるくさり橋を中心に半径2〜3㎞の範囲に集中している。

メトロ(地下鉄)、トラム(路面電車)、市バス、タクシーなどを利用して点在する見どころを効率良く回り、時間に余裕があれば美しい街並みをゆっくり散策して楽しみたい。

ブダ地区は起伏がある丘陵地帯で自然が多く、ドナウ川からせり上がった丘には王宮が堂々と佇み、その南にあるゲッレールトの丘からはブダペストの町を一望できる。

町外れの西方には標高527mのヤーノシュ山がそびえ、頂上には山あいに広がる街並みを眺められるエルジェーベド展望台がある。

ペスト地区は平地の商業地帯で、様々な商店や会社オフィス、官庁や劇場、美術館や博物館などが建ち並び、見どころはエルジェーベド広場から英雄広場へと延びるアンドラーシ通り周辺に集中し、繁華街であるヴァーツィ通り周辺も人々で賑わっている。

町の北側に位置するオーブダ地区は中心部から少し離れるが、ブダペストで最も古い歴史をもつ地区だけあって、歴史を感じさせる落ち着いた雰囲気をしている。

町には博物館や美術館が点在し、ドナウ川に浮かぶマルギット島は島全体が公園になっていて、緑豊かなこの場所は地元民や旅行者の憩いの場として親しまれている。

地区ごとに多くの見どころがあるブダペストだが、着いたらまずはツアーインフォーム(Tourinform)と呼ばれる観光案内所に向かいたい。

ペスト地区のデアーク・フィレンツ広場(Deák Ferenc tér)の南側にあり、無料の地図や各種パンフレットなど様々な情報が入手できる。
また、この観光案内所はリスト・フィレンツ国際空港の第2ターミナルの1階にもある。

ハンガリーの世界遺産:ドウナ河岸とブダ城地区とアンドラーシ通りとブダペスト

ブダペストの見どころ


ブダ地区の見どころ


くさり橋 Chain Bridge

西のブダと東のペストを初めて結んだのが、ドナウ川に架けられたこのくさり橋。
くさり橋はブダペストのシンボルといわれており、夜になると380mのケーブルに設置された電灯がドナウ川を照らすようにライトアップされ、美しい輝きを放つ。

ハンガリーの英雄セーチュニ・イシュトヴァーン伯爵によって、約10年の歳月かけて1849年に完成したドナウ橋は、第二次世界大戦でドイツ軍によって破壊されてしまう。

橋は後に修復され、1949年に開通式が行われてからは、現在までその姿を守り続けている。
また、橋の両側にはブダペストの街を見守るように4頭のライオン像が鎮座している。

王宮の丘 Royal Palace

水色のドーム型の屋根が目立つブダ王宮、高い塔がそびえるマーチャーシュ教会などがある王宮の丘。
この他にも美術館や博物館など、様々な歴史的建造物が建ち並んでいる。

王宮の丘へは階段で登ることもできるが、くさり橋のたもとにあるクラーク・アーダーム広場から出ているケーブルカーを利用すると便利。

ケーブルカーの運行時間は7:30〜22:00で、利用料金は片道1200Ft、往復1800Ft。

この地に初めてブダ王宮が建てられたのは13世紀頃だが、その後は他国との戦いによる破壊や修復、増改築が行なわれ、現在の姿となったのは1950年代になってからのこと。
昔から王の居城であったこの場所は、常にブダペストの政治と文化の中心であった。

高い尖塔が目につくマーチャーシュ教会も王宮と同じく長い歴史を持つ。
13世紀に聖母マリアに捧げるためロマネスク様式で建てられ、14世紀にはゴシック様式に改築される。
16世紀にはオスマン帝国に占領されモスクに改築されるが、17世紀にはバロック様式のカトリック教会に再び改築される。

そして19世紀後半にゴシック様式に改築され、その後は修復などが行なわれ現在の姿となった。
内部は美しいステンドグラス、宗教画、石像などで彩られ、様々な時代と建築様式を経ているだけあって、威厳ある独特の雰囲気が漂っている。

また、広大な王宮の丘には、この他にも下記の歴史ある建物が残されている。

  • 軍事歴史博物館
  • マーリア・マグドルナ塔
  • 電話博物館
  • 防空壕病院(岩病院)
  • 金の鷲薬局博物館
  • 王宮地下迷路
  • セーチュニ図書館
  • ライオンの中庭
  • ブダペスト歴史博物館
  • 国立美術館
  • 国立ダンス劇場
  • 三位一体広場
  • 聖イシュトヴァーンの騎馬像
  • マジパン博物館
  • 漁夫の砦
  • 音楽史博物館
  • 中世ユダヤ礼拝堂
ゲッレールトの丘とその周辺

ブダ地区の南側に位置する小高い丘で、丘の頂上にはツィタデッラという要塞がある。
要塞にある“しゅろの葉”を掲げた女性の像は、1945年にナチス・ドイツから街を解放したソ連軍の慰霊碑として建てられたもので、高台からブダペストを見守る自由の象徴のような存在。

標高235mのこの丘からはブダペストの街を一望でき、展望地として人気の場所。
丘の周辺には、ルダシュ温泉、ゲッレールト温泉、ラーツ温泉、聖ゲッレールト・モニュメント、エルジェーベド像などの見どころがある。

また、丘の周辺はエルジェーベド橋と自由橋という2つの橋でペスト地区と結ばれている。

各公式サイトはこちら。
ルダシュ温泉
ゲッレールト温泉

ヤーノシュ山とその周辺

ブダ地区の西側にそびえる標高527mのヤーノシュ山。
街の中心部から離れた静かな場所であり、山の周辺にはバルトーク・ベーラ記念館が、頂上にはエルジェーベド展望台などがある。

バルトーク・ベーラとはハンガリーを代表する作曲家で、かつての彼の住居が現在は記念館として公開されており、楽譜やピアノなどの他にも記念品などが展示されている。

展望台からはブダペストの街を一望でき、街の中心部からは登山鉄道と子供鉄道、またはリフトを利用して山の頂上まで行くことができる。
子供鉄道とは1951年に設立され、運転手以外は全て10〜14歳の子供たちで運営されている鉄道。

各公式サイトはこちら。
バルトーク・ベーラ記念館
子供鉄道

オーブダ地区の見どころ


マルギット島 Margitsziget

ドナウ川に浮かぶ長さ2.5km、幅500mの島で、かつては“うさぎの島”と呼ばれていたが、13世紀のハンガリーの王ベーラ4世の娘の名前をとって、マルギット島と呼ばれるようになった。

マルギット島は、全体が綺麗に手入れされた緑豊かな公園となっており、島内には温泉プールやホテル、日本庭園、野外劇場などがあり、夏季にはこの劇場でオペラやコンサートが開催される。
また、島内にはレンタサイクル屋もあり、サイクリングを楽しむこともできる。

ペスト地区の見どころ


国会議事堂 Országház

ドウナ川沿いにあるコッシュート・ラヨシュ広場にたたずむ国会議事堂。
全長268m、幅118m、総面積1万8000㎡を誇り、17年の歳月をかけて1902年に完成した。

ネオゴシック様式、バロック様式、ルネッサンス様式などの様々な様式を取り入れた国会議事堂は外観も美しいが、彫刻やフレスコ画など様々な装飾が施された建物内部も一見の価値あり。

また内部では、約950年にわたり歴代の王から王へと受け継がれてきた王冠を見ることもできる。
建物内部へは、国会議事堂のビジターセンターから始まるガイドツアーでのみ入場可能。
このツアーチケットはビジターセンターか国会議事堂公式サイトで購入できる。

公式サイトはこちら。
Országház

聖イシュトヴァーン大聖堂 Szent István bazilika

デアーク広場から北に300mほどの所にある、ブダペスト最大の大聖堂。
ドームの直径22m、高さ96mのこの大聖堂は、約50年の歳月をかけて1905年に完成した。

大聖堂内の「聖なる右手の礼拝堂」には、ハンガリー初代国王聖イシュトヴァーンの右手のミイラが展示されおり、旅行者も見学することができる。
この他にも内部には豪華な宝物館が、ドームの周辺にはエレベーターで登れる展望台がある。

公式サイトはこちら。
Szent István bazilika

アンドラーシ通りとその周辺

エルジェーベド広場から英雄広場まで真っ直ぐに延びるアンドラーシ通り。
アンドラーシ通り周辺には国立オペラ劇場やシナゴーグ、様々な博物館や美術館が点在している。

通りの北端に位置する英雄広場は、ハンガリー建国1000年を記念して1896年に造られたブダペスト最大の広場で、地元民や旅行者で賑わっている。

広場の中心にはハンガリー歴代の英雄の像が並び、中央には大天使ガブリエルを頂く高さ35mの記念碑がそびえ立つ。

英雄広場の裏手には広さ1㎢の大きな市民公園があり、公園内の池の島には様々な建築様式を取り入れて建てられたヴィイダフニャド城が建つ。

現在この城の一部は農業博物館になっており、公園内にはこの他にも動物園、国立大サーカス、セーチュニ温泉、聖イシュトヴァーンの泉、交通博物館、現代博物館、航空博物館などが点在している。
また、公園内の池は冬季にはスケートリンクとして利用することができる。

現地の各公式サイトはこちら。
市民公園
動物園
国立大サーカス
セーチュニ温泉
国立オペラ劇場

ハンガリーの世界遺産:ドウナ河岸とブダ城地区とアンドラーシ通りとブダペスト

ブダペストの天気・気候


内陸国であるハンガリーは北海道と同じくらいの緯度に位置し、気候は大陸性気候に属する。
日本のように四季があるが、地域によっての気候の差はあまりない。
日本と比べると年間を通じて雨が少なく、夏と冬の寒暖の差が大きい。

近年の異常気象の影響で、夏には最高気温が35℃に達することもあるが、冬は最低気温がマイナス10℃以下になることもある。

ブダペストの年間降水量は510㎜ほどで、毎月30〜60㎜ほどの雨が降る。
ハンガリー観光のベストシーズンは春から秋にかけての5〜9月で、7〜8月は旅行者で最も混雑する。

夏は6〜8月で、6月頃から気温が高くなり、日中は30℃を超えることも珍しくない。
7〜8月は異常気象の影響で35℃を超えることもある。
また、日照時間も長くなり、20時を過ぎても明るいほど。

しかし朝晩は気温が下がるので、薄手の上着があるといいでしょう。
ブダペストの6〜8月の平均最高気温は26℃前後で、最低気温は14℃前後。

12〜2月は本格的は冬となり、日中でも最高気温は5℃を下回る。
1〜2月は各地で雪が降り、最低気温は10℃以下になることもある。

深い霧が出る日も多くなり、朝晩はかなり冷え込むので防寒対策が必須となる。
ブダペストの12〜2月の平均最高気温は3℃前後で、最低気温はマイナス2.5℃前後。

ブダペストの天候グラフ

ハンガリーの世界遺産:ドウナ河岸,ブダ城地区及びアンドラーシ通りを含むブダペスト 観光・旅行
ブダペストの2017〜2018年の天候データ
出典:気象庁ウェブサイト
ハンガリーの世界遺産:ドウナ河岸とブダ城地区とアンドラーシ通りとブダペスト

アクセス:日本からの行き方


現在、日本からハンガリーへの直行便はなく、最低1度は近隣諸国で乗り換えが必要になる。
一般的な経由地はパリ、フランクフルト、ヘルシンキ、アムステルダム、ウィーンなどで、これらの都市からブダペストのリスト・フェレンツ国際空港まで所要90分ほど。
日本から上記の都市までは所要12〜13時間ほど。

空港からブダペスト市内への移動について

空港からブダペスト市内までは約24km離れており、エアポート・シャトルバスやエアポート・タクシーを利用するか、もしくは市バスで駅まで向かい、地下鉄や鉄道を利用して市内に向かう。

  • エアポート・シャトルバスで市内へ向かう
    到着ロビーのエアポート・シャトルバス受付カウンターでチケットを購入して利用する。
    空港から市内までが3つのエリアに分けられており、下車するエリアによって料金が異なる。

    ある程度乗客が集まってから出発するので待たされることもり、出発すると空港から目的地が近い順に乗客を降ろしていくシステムになっている。


    公式サイトはこちら。
    エアポート・シャトルバス


  • エアポート・タクシーで市内へ向かう
    フォータクシー社(Fotaxi)が空港公認のエアポート・タクシーとして運行している。
    料金はメーター制で、市内中心部までの料金は6000〜7000Ftほどが目安。

    公式サイトはこちら。
    Fotaxi


  • 市バスと鉄道で市内へ向かう
    空港ターミナル2A前から市バス200E番でフェリヘジ駅(Ferihegy)まで行き、ここからハンガリー鉄道MAV-STARTで西駅(Nyugati-pu.)に向かう。

    公式サイトはこちら。
    MAV-START


  • 市バスと地下鉄で市内へ向かう
    空港ターミナル2A前から市バス200E番で終点クーバーニャ・キシュペスト駅(Kobanya-Kispest)まで行き、ここから地下鉄M3でデアーク・フェレンツ広場駅(Deák-Ferenc-tér)や西駅(Nyugati-pu.)に向かう。
通貨と言語とビザについて

ハンガリーの通貨はフォリント(Forint)で、紙幣と硬貨が流通している。
公用語はハンガリー語だが、観光地などでは英語が通じる所も多く、ドイツ語も比較的よく通じる。
シェンゲン協定加盟国であるハンガリーへの入国は、90日以内の滞在であればビザは不要。
パスポートの残存有効期間は、ハンガリー出国予定日から3ヶ月以上必要。

シェンゲン協定に関しての詳細はこちら
シェンゲン協定加盟国への入国方法

気候に関してはこちら
ハンガリーの気候と観光・旅行のベストシーズンと年間行事

基本情報はこちら
ハンガリーの基本情報-時差、言語、人口、宗教、首都、飲料水など

ハンガリーのその他の世界遺産についてはこちら
パンノンハルマのベネディクト会修道院とその自然環境
ペーチにある初期キリスト教墓地遺跡

地方移住生活というサイトもやっています。
合わせて読みたい記事はこちら