ネパールの世界遺産:カトマンズ盆地 観光・旅行情報まとめ
この記事の目次
世界遺産の歴史と登録の概要
北部のヒマラヤ山脈と南部のマハーバーラタ山脈の間の複雑な山岳地帯に広がるネパール。
太古の昔は湖だったと言われるこの土地に、ネワール族によってネパール唯一の都市文明が築かれる。
13世紀にはカトマンズにマッラ王朝が誕生し、国の交易や文化の中心として栄えていくと共に、ヒンドゥー教と仏教が共存した独自のネワール文化が発展していく。
15世紀後半にマッラ王朝はカトマンズ、パタン、バクタプルの3つの王国に分裂し、3人の王子によってそれぞれの土地に都が築かれると、その後は競い合うように次々と寺院や宮殿などが建立される。
現在も残されている宮殿や寺院、堂塔や古民家などはほとんどがこの時代のもので、建造物だけに留まらず、絵画や彫刻など芸術性の高いネワール文化が花開いた時代でもある。
18世紀まで続いたマッラ王朝の中心といて栄えたカトマンズは“カマンティプール(栄光の都)”と称えられ、現在までネパールの首都として発展してきた。
このように、中世より受け継がれてきたネワール文化の歴史が色濃く残るカトマンズ、パタン、バクタプルの3つの都市と7つの遺跡群が、1979年に“カトマンズ盆地”として世界遺産に登録された。
日本では“カトマンズの谷”や“カトマンズ渓谷”とも呼ばれるこの地域は、昔から大きな地震が多発している場所で、2015年4月に発生した大地震はカトマンズ盆地全体に甚大な被害をもたらした。
カトマンズの町について
カトマンズは首都にしてはこじんまりとした町で、見どころはタメル地区とダルバール広場の周辺に集中しており、大抵の場所へは歩いていける。
タメル地区はカトマンズの北側に位置し、ホテルやゲストハウスがこのエリアに集中していることもあり、常に旅行者で賑わっている。
他にも旅行会社や両替屋、みやげ屋やレストランなど、旅行者に必要なものはなんでも手に入る。
このタメル地区から南へ徒歩20分ほど、距離にして約1.5㎞の所にあるのが、“町のへそ”とも言われるダルバール広場で、周辺の通りには露天商がみやげ物を並べ、多くの人で賑わう。
また、広場の1㎞ほど東にあるラトナ・パークとその周辺にはバスターミナルがいくつもあり、ボダナート、パタン、バクタプル、チャング・ナラヤンなど、カトマンズ盆地の各町行きのバスが出ている。
外国人がダルバール広場に入るには入場料を支払う
外国人がダルバール広場に入るには、広場手前でRs1000の支払い、チケットを受け取る。
入場する際にこのチケットが必要で、チケットの半券は広場内にあるハヌマン・ドカ(旧王宮)に入場するために必要になるので捨てないように。
このチケットは基本的には当日のみ有効だが、広場内にあるバサンタプル広場のサイト・オフィスで手続きを行えば、ビザの有効期間内ずっと利用できるビジターパスを無料で発行してくれる。
手続きの際に必要な物はチケットの半券、パスポート、顔写真1枚。
カトマンズの見どころ
ダルバール広場 Durbar Square
世界遺産に登録されている遺跡群の1つで、ダルバールはネパール語で宮殿を意味し、パタンとバクタプルにも同様の広場があるが、それぞれマッラ王朝時代の中心地として栄えてきただけあり、どの広場にも見事な宮殿や寺院が立ち並んでいる。
- ハヌマン・ドカ Hanuman Dhoka
- シヴァ寺院 Maju Deval
- カスタマンダブ寺院 Kasthamandap
- アショク・ビナヤク Ashok Binayak
- ナラヤン寺院 Trailokya Mohan
- シヴァ・パールヴァティー寺院 Shiva-Parvati Mandir
- タレジュ・ベル Taleju Bel
- クマリの館 Kumari Bahal
- カーラ・バイラヴ Kala Bairav
スワヤンブナート Swayambhunath
世界遺産に登録されている遺跡群の1つで、緑豊かな小高い丘の頂上に白いストゥーパが建つ。
太古の昔、カトマンズ盆地がまだ湖だった頃から丘の上に建っていたという伝説をもち、ネパール最古の仏教寺院と言われている。
森を抜けて石段の参道を登るとストゥーパの正面に出るが、外国人は入口で入場料Rs200(当日のみ有効)を支払う。
境内を散策する際は、ストゥーパを時計回りに歩くのが仏教の作法であるが、仏教経典にもブッダに対して弟子が右肩を向けて尊敬の意を表する場面がよく描かれている。
また、この寺院は“モンキーテンプル”といわれるほど周囲の森にサルが多く、食べ物を持っていると奪われることがあるので注意が必要。
タメル地区から約2㎞西にあり、タクシーでRs250ほどでこれるが、歩いても30分ほどで着く。
パシュパティナート Pashupatinath
世界遺産に登録されている遺跡群の1つで、聖なる川といわれるバグマティ川の川岸に位置する。
ネパール最大のヒンドゥー教寺院であり、インド亜大陸にある4大シヴァ寺院のひとつでもある。
シヴァとはヒンドゥー教3大神のひとりである破壊神のことで、パシュパティとは獣の王という意味。
川に架かる橋のたもとには火葬場があり、火葬されたヒンドゥー教徒の遺灰は川に流される。
日本人とは死生観が異なり、ヒンドゥー教徒は輪廻転生を信じて墓は造らないという。
外国人がパシュパティナートに入るには、火葬場の手前で入場料Rs1000(当日のみ有効)を支払う。
パシュパティナートにはいくつもの寺院が立ち並んでいるが、ヒンドゥー教徒以外の立ち入りを禁止している寺院が多く、兵士が守衛をする姿も見受けられる。
また、この辺りの森にはサルが多く、サルの前で食べ物を出すと襲われることがあるので注意が必要。
タメル地区から約4㎞東にあり、タクシーでRs300ほどでこれる。
カトマンズ周辺の見どころ
ボダナート Boudhanath
世界遺産に登録されている遺跡群の1つで、ネパール最大のストゥーパが堂々と佇む。
古くからチベット仏教徒の主要な巡礼地であり、現在もネパール、インド、ブータンなどからの巡礼者が時計回りにストゥーパを歩く姿が見られる。
ストゥーパ正面には入場ゲートがあり、外国人は入場料Rs250(当日のみ有効)を支払う。
満月の夜には、ストゥーパのドームの下の108の仏像にロウソクが灯され、周辺では無数のバターランプの灯明が捧げられて、幻想的な姿のストゥーパが月明かりの下に現れる。
タメル地区から約5㎞東にあり、タクシーでRs300〜400、所要20〜30分で着く。
パタン Patan
マッラ王朝3王国時代に首都として栄えた古都で、現在も当時のネワール文化の面影が色濃く残る。
パタンとは“美の都”という意味をもち、その名の通り町には芸術性の高い建造物や彫刻が多い。
観光の中心はダルバール広場で、広場内には旧王宮や寺院などが建ち並んでいる。
外国人は広場の手前で入場料Rs500を支払い、1週間有効のチケットを受け取る。
このチケットは、広場の500mほど西にあるLSMCオフィスで手続きすれば、ビザの有効期間内ずっと利用できるビジターパスを無料で発行してくれる。
手続きの際に必要な物はチケット、パスポート、顔写真1枚。
広場の周辺に限らず、パタンにはたくさんの寺院が残されているので、時間に余裕があればゆっくり散策するのもいいでしょう。
町の西側には動物園やチベット難民キャンプなどもあり、難民キャンプそばのハンディクラフトセンターではチベットの民芸品の制作・販売が行われ、売り上げは難民キャンプの運営資金などに使われる。
タメル地区から約7㎞南にあり、タクシーでRs300〜400、所要20〜30分で着く。
バクタプル Bhaktapur
マッラ王朝3王国時代に首都として栄えた古都で、カトマンズ盆地で3番目に大きな町。
遠くにヒマラヤ山脈を望めるこの町には、れんが造りの古民家や寺院が建ち並び、中世のネワール文化の街並みが現在も残されている。
バクタプルは“帰依者の町”という意味のもち、町には古き良き時代の雰囲気が漂っている。
見どころは、町の中心部にあるダルバール広場、その南にあるトウマディー広場、そして町の東側にあるタチュパル広場の3ヶ所なので、美しい街並みを眺めながら歩いて移動したい。
各広場とその周辺には多くの寺院が建ち並び、ダルバール広場の中央には旧王宮が建っている。
また、町に入る道にチェック・ポイントがあり、外国人はここで入域料Rs1500を支払う。
このチケットは7日間有効だが、ダルバール広場のゲート脇にあるオフィスで手続きすれば、ビザの有効期間内ずっと利用できるパスを無料で発行してくれる。
手続きの際に必要な物はチケット、パスポート、ビザのコピー、顔写真2枚。
タメル地区から約15㎞東にあり、タクシーでRs800〜1000、所要40分ほどで着く。
チャング・ナラヤン Changu Narayan
世界遺産に登録されている遺跡群の1つで、カトマンズ盆地の東端に位置する小さな町の丘の上に、ネパール最古のヒンドゥー寺院が建っている。
町は小さく、沐浴場や食堂を抜けて石段を登っていくと、れんが造りの建物に囲まれた境内に着く。
この丘の標高は1541mで、天気が良ければパタンやボダナートなど、カトマンズ盆地全体を一望できる。
また、町の石段の下にはカウンターがあり、外国人は入域料Rs300を支払う。
タメル地区から約20㎞東にあり、タクシーでRs1000〜1200、所要50分ほどで着く。
カトマンズの天気・気候
ネパールの国土は、北部のヒマラヤ山脈と南部のマハーバーラタ山脈の間に複雑な山岳地帯が広がっている一方で、南部のインド国境付近には“タライ”と呼ばれる広大な平原があり、地域や標高差によって気温や降水量が異なる。
また、ネパールには乾季と雨季、そして四季があり、季節によっても気候が大きく異なる。
夏の6〜8月は雨季、秋の9〜11月、冬の12〜2月、春の3〜5月は乾季となる。
標高約1330mに位置するカトマンズ周辺は年間を通じて温暖で、夏の日差しは強いが、湿度は高くないので過ごしやすい。
3〜10月は最高気温が25〜30℃まで上がるので、昼間はTシャツで過ごせるが、朝晩の寒暖の差が大きいので夏でも薄手の上着を用意したほうがいいでしょう。
真夏でも朝晩は20℃以下まで気温が下がり、春や秋には10℃前後まで冷え込む。
冬でも日中は20℃近くまで気温が上がるが、朝晩は3℃前後まで冷え込むので防寒着が必要になる。
雨は11〜2月はほとんど降らず、最も降水量が多い7・8月には1ヵ月に350㎜ほどの雨が降る。
6・9月は200㎜前後、5・10月は50〜100㎜ほどの雨が降る。
乾季と雨季の時期と特徴
乾季
その年によって若干の差はあるが、通常は9月後半〜5月頃までが乾季で、気温も低く雨も少ない。
9〜10月にかけて雨が少なくなっていき、11月には本格的な乾季に入る。
11〜2月はほとんど雨が降ることがなく、ネパール観光のベストシーズンといえる。
この時期は空気が澄んでいて雲も少ないので、カトマンズ周辺の丘陵からヒマラヤ山脈を望める。
しかし4〜5月になると雨が増え、ヒマラヤが雲に隠れる日も増えてくる。
そして徐々に雨が増え気温が上がると、ヒマラヤが望める見込みは少なくなり、6月頃には雨季となる。
雨季
その年によって若干の差はあるが、通常は6月頃〜9月前半までが雨季となる。
最も雨が多いのは7月で、8月もかなり雨が降るが、9月に入ると徐々に降水量は少なくなっていく。
雨季の初めは10〜20分ほどで止む激しい夕立が1日1回ある程度だが、短時間で止んでいたこの夕立が1時間や2時間も続くようになり、1日1回だったのが2回や3回と増えていき、本格的な雨季となる。
雨季といっても、日本の梅雨のように1日中降り続くことはほとんどなく、激しいスコールの後には太陽が顔を出し、眩しい光が降り注ぐ。
しかし、ヒマラヤには1日中雲がかかってしまい、カトマンズ周辺の丘陵から望むことは期待できない。
カトマンズの天候グラフ
気象庁にデータが無い月は、グラフの線が切れている。
アクセス:日本からの行き方
現在、日本からネパールへの直行便はないため、バンコク、デリー、香港、ソウル、シンガポール、クアラルンプールなどアジアの主要都市を経由して、ネパール唯一の国際空港であるカトマンズのトリブバン国際空港(Tribhuvan International Airport)に向かうのが一般的。
航空会社や経由地にもよるが、所要時間は約15時間〜で、経由地で1泊する便も多い。
空港からカトマンズ市内への移動について
空港からカトマンズの中心部へは約4㎞あり、移動手段はタクシーのみ。
ホテルやゲストハウスが集中するタメル地区までは、所要30分ほどで料金はRs700。
到着ロビーから外に出ると、右側にタクシーの受付カウンターがあるので、ここで手配してもらう。
空港から各地への料金はパタンがRs750、バクタプルがRs1100、ナガルコットがRs2500。
ただし、21:00以降は料金がRs100増しとなる。
通貨と言語とビザについて
ネパールの通貨はルピー(Rupee)と補助通貨のパイサ(Paisa)、記号はルピーがRs、パイサがP、Rs1はP100となるが、現在パイサはほとんど流通しておらず、ホテルや観光地などではUSドルが使える所も多い。
公用語はネパール語だが、古くからイギリスとの関係が深かったこともあり、英語が通じる所も多い。
また、日本人が観光目的でネパールに入国するには、観光ビザが必要。
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