シニアの地方移住は、第二の人生をゆったりと過ごす魅力的な選択肢。
しかし、年を重ねるほど健康面の不安は大きくなるもの。
医療や交通の利便性、介護サービスの充実度など、移住先選びには慎重さが求められます。
都会のストレスから解放されたいと田舎への移住を考えるシニアも多いですが、のどかな田園風景と引き換えに、車なしでは不便な暮らしを強いられるリスクもあるのです。
穏やかで快適な環境でセカンドライフを満喫するには、自分に合った地方都市を見極めることが何より大切。
この記事では、地方移住経験者の視点から、シニアの地方移住のポイントをわかりやすく簡単に解説。
移住後に「こんなはずじゃなかった」と後悔しないよう、この機会に理解を深めましょう。
地方に移住してどんな生活を送りたいのか?
イメージしながら読んでみてください。
1. シニアの定義は65歳以上が一般的だが個人差が大きい
WHO(世界保健機関)ではシニアを65歳以上と定義しています。
しかし、定年退職のタイミングや健康状態、ライフスタイルは人それぞれ。
年齢だけでシニアと判断するのは難しいのが実情。
むしろ、身体的、精神的、経済的に自立した生活を送れているかどうかがポイントになります。
1-1. 60代前半は「アクティブシニア」、75歳以上は「高齢者」と区分する例も
一応、シニアの定義は65歳以上ですが、60代前半の若々しい人々は「アクティブシニア」と呼ばれることもあります。
「まだまだ若いものには負けない」と考える60代は多いですが、70歳を超えると心身の衰えを感じる人が増えてきます。
この年齢以上を「高齢者」と区分するのが一般的。
1-2. 定年退職のタイミングでシニアライフがスタートすると考える人も多い
日本の多くの企業では60歳定年制を採用しています。
そのため、定年退職のタイミングでシニアライフに突入すると考える人が少なくありません。
「第二の人生」がスタートする節目の年齢といえるでしょう。
しかし、再雇用制度の普及により、実質的な定年年齢は65歳前後になっているのが現状です。
1-3. 年齢によらず、心身の健康状態や経済力でシニアを判断することが大切
体力的にも精神的にも健康で、経済的にもゆとりがある人は、年齢に関係なくアクティブなシニアライフを楽しめます。
逆に、若くても病気がちだったり、生活に余裕がなかったりすると、充実した毎日を過ごすのは難しいものです。
つまり、シニアであるかどうかは、年齢よりも健康状態とライフスタイル次第といえるでしょう。
移住先選びでは、自分に合ったロケーションを見極めることが何より大切です。
2. シニアに田舎や過疎地はオススメできない3つの理由
都会の喧騒から離れ、自然豊かな田舎暮らしを夢見るシニアは多いものです。
しかし、医療や交通の便が悪く、買い物にも不便な過疎地は、高齢者には厳しい環境といえます。
のどかな田舎への移住は、若いうちならまだしも、シニア世代にはリスクが大きいのです。
年を取るほど、生活利便性の高さが移住先選びの決め手になるでしょう。
2-1. 医療機関へのアクセスの悪さは命取りになりかねない
田舎や過疎地は、総合病院などの大きな医療機関が近くにないことが多いです。
救急車を呼んでも、搬送先の病院が遠方だと、助かる命も助からないかもしれません。
特に持病をお持ちの方は、専門医が常駐する医療機関へのアクセスの良さを重視すべきでしょう。
定期的な通院のしやすさは、シニアライフの大前提といえます。
2-2. 路線バスなどの公共交通機関が乏しく移動手段の確保が難しい
過疎地では、マイカーがないと生活するのが難しいのが現実です。
路線バスの本数が少なく、鉄道の駅まで遠かったりするためです。
免許返納後の足の確保が困難なのは、シニアにとって由々しき問題。
歩いて行ける範囲に、スーパーや病院などがあるロケーションを選ぶ必要があります。
2-3. 生活必需品の買い物に不便な点は見過ごせない
食料品や日用品の買い物難民になりがちなのも、田舎や過疎地の難点です。
近隣になかなかスーパーがなく、移動販売車を利用せざるを得ないこともあるでしょう。
品揃えが豊富とは言えず、日々の食事作りにも支障をきたします。
移住先は、毎日の買い物に不自由しない環境であることが何より重要です。
3. シニアには利便性の高い地方都市がオススメな3つの理由
かといって、東京や大阪などの大都市は、物価が高く、人口密度も高いので、住みにくい面があります。
都会のストレスから解放されたいシニアには、地方都市がオススメです。
自然環境に恵まれながら、ある程度の利便性も備えているのが魅力。
穏やかに暮らせる地方都市は、快適なセカンドライフを過ごすのにうってつけの地といえるでしょう。
3-1. 自然と都市機能のバランスが取れている
地方都市の多くは、豊かな自然に囲まれています。
山や海、川や湖など、四季折々の景色を楽しめるのは大きな魅力。
さらに、病院、ショッピングセンター、公共交通機関なども揃っています。
自然のやすらぎと生活の利便性を両立できる、シニアに理想的な環境といえるでしょう。
3-2. 物価が安く、年金暮らしでもある程度ゆとりを持てる
東京など大都市圏に比べ、地方都市は家賃相場が安いのが特徴です。
食料品などの物価も全般的に安めなので、年金を主な収入源とするシニア世代に優しい環境です。
同じ年金額でも、都会より地方の方が生活水準は上がります。
余裕のある資金計画を立てられるのは、大きなメリットといえるでしょう。
3-3. 人口密度が低く、ストレスフリーに暮らせる
地方都市は、東京や大阪などに比べて人口密度が格段に低いです。
人混みに揉まれることなく、ゆったりとした空間で暮らせるでしょう。
周囲を気にせず、自分のペースで生活できるのは、シニアにとって何よりものストレス解消法です。
毎日を穏やかに過ごせる環境は、心身の健康維持にも一役買ってくれるはずです。
4. シニアの移住にやさしい街の3つの特徴
地方都市の中でも、シニアに特におすすめなのが、移住者を積極的に受け入れている自治体です。
行政の手厚いサポートを受けられるのは、高齢者にはありがたい限り。
移住者向けのイベントで仲間作りもしやすいので、新天地での人間関係にも困りません。
充実した医療・福祉や、温暖な気候風土など、シニアフレンドリーな街選びのポイントをチェックしておきましょう。
4-1. 移住者を歓迎する自治体の支援制度が充実している
移住者の呼び込みに積極的な自治体では、様々な支援制度を用意しているものです。
移住に伴う引っ越し費用の補助や、家賃の一部補助などが代表例。
移住者専用の相談窓口を設置していたり、先輩移住者との交流会を開催していたりと、ソフト面のサポートも手厚いでしょう。
行政のバックアップは、リタイア後の移住の大きな助けになります。
4-2. 医療・福祉の整備状況が整っている
高齢者の移住先選びで外せないのが、医療と福祉の充実度です。
総合病院などの大きな医療機関だけでなく、在宅医療に力を入れているかどうかも大切。
介護施設やデイサービスなどの福祉拠点の整備状況もチェックしておきたいポイントです。
いざという時に頼れる医療・福祉のインフラが整っているのは、シニアには心強い限りです。
4-3. 冬場の寒さが厳しくない温暖な気候が望ましい
シニアは寒さに弱いので、冬の厳しい寒冷地は移住先には向きません。
北海道や東北など豪雪地帯は、家の周りの雪かきなども大変です。
一年を通して温暖な気候の土地が、シニアには快適でしょう。
特に南国と呼ばれる沖縄や九州など西日本は、冬でも暖かいのが魅力です。
5. おひとりさまの老後移住の3つの注意点
配偶者と死別したり、離婚したりして、老後をひとりで過ごすシニアも少なくありません。
おひとりさまの場合、移住先選びには一層の慎重さが求められます。
日々の暮らしの中で、ちょっとした困りごとが発生した時に助けを求められる体制作りが大切。
公的な支援に加え、近所付き合いなどで良好な人間関係を築いておくことが、単身高齢者の安心につながるでしょう。
5-1. 地域の支え合いネットワークが整備されているか確認する
ひとり暮らしのシニアは、何かあった時に助けを求める相手がいないのが悩みの種。
民生委員の見回りなど行政の体制はもちろん、地域住民同士の支え合いネットワークの有無を確認しましょう。
近所の目が行き届いている地域なら、おひとりさまでも安心して暮らせるはずです。
自治会の活動が盛んな土地柄も、単身シニアには心強いものです。
5-2. 気の合う仲間作りの場が近くにあると心強い
移住先で、趣味の合う仲間と出会えるかどうかも、ひとり暮らしのシニアライフの充実度に関わります。
公民館の市民講座など、地域の交流イベントが定期的に開催されているのは心強いもの。
新しい土地での人間関係作りのきっかけになるでしょう。
介護予防を兼ねたサロン活動など、高齢者の集いの場が整っている地域がおすすめです。
5-3. 困った時にすぐ駆けつけてくれる身内が近くにいるのが理想
ひとりで暮らす高齢者にとって、近くに身内がいるのは何より心強いものです。
急病の時も、ちょっとした困りごとの時も、家族に助けを求められるのは大きな安心材料になります。
「子育て支援」と「親孝行」を同時に叶える二世帯近居も、おひとりさまシニアには理想的。
同居は難しくても、近くに身内がいるのが望ましいでしょう。
6. 車なしでの生活が難しいのが地方移住の最大のネック
地方都市とはいえ、公共交通機関はそれほど発達していないのが実情です。
特に郊外に行くと、自家用車がないとどこにも行けない、いわゆる「移動難民」になりがち。
買い物や通院など、日常生活のほとんどの場面でマイカーが必要になるでしょう。
6-1. 路線バスは本数が少なく、鉄道の駅まで遠い
都会では、路線バスのネットワークが発達しているので、電車に乗るまでもなく移動できます。
一方、地方都市のバス路線は、運行本数が少なく、カバーエリアも限られています。
自宅から最寄りのバス停まで徒歩圏内とは限りません。
鉄道の駅まで数キロ離れていることも珍しくないでしょう。
車がないと、わずか数キロの移動にも長い時間がかかり、不便この上ないのです。
6-2. タクシーを使うにも、深夜早朝は対応していないことが多い
都会なら、深夜早朝でもタクシーを簡単に拾えますが、地方ではそうはいきません。
繁華街から外れると、流しのタクシーはほとんど見かけないのが普通です。
配車アプリで呼ぶにしても、到着までに時間がかかることも。
しかも、地方のタクシー会社の営業時間は意外と短かったりするのです。
6-3. 自転車やシニアカーの利用を検討する必要あり
運転に自信がなくなったシニアは、車の代わりに自転車やシニアカーの利用を考えましょう。
ただ、冬場は雪や路面凍結で、二輪車は利用しづらいのが難点。
また、アップダウンの激しい土地では、踏破力の乏しい自転車やシニアカーには限界があります。
移住先は、車なしで暮らせる場所を選ぶ必要があるでしょう。
7. 高齢者になっても車を運転する3つのデメリット
車社会の地方では、高齢になっても免許を手放せないシニアが少なくありません。
しかし、運転に自信がなくなってきているのに、無理に車に乗るのは危険。
認知機能の衰えから、運転操作を誤って事故を起こすリスクが高まるのです。
運転に必要な動体視力も、高齢になると低下するので要注意。
7-1. ブレーキとアクセルの踏み間違いによる事故のリスクが高い
高齢ドライバーによる事故の代表例が、ブレーキとアクセルの踏み間違い。
アクセルを踏むつもりが、右足が突っかかるようにブレーキを強く踏み込んでしまうのです。
認知症の恐れがなくても、高齢になると反射神経が鈍るので、運転ミスを犯しやすくなります。
運転に自信がなくなってきたら、早めの免許返納が賢明でしょう。
7-2. 動体視力が衰えて危険に気づくのが遅れがち
安全運転に欠かせないのが動体視力。
動いている対象物をはっきり捉える能力のことで、高齢になると著しく低下するのです。
視界に入ってきた歩行者や自転車、他の車などの動きが認知できず、回避が遅れるおそれがあります。
動体視力の低下は自覚しにくいだけに、運転を控えるタイミングが難しい問題でもあるのです。
7-3. 「歩行者妨害」など迷惑駐車のトラブルを招きがち
運転技術以外で高齢ドライバーが陥りやすいのが、迷惑駐車のトラブル。
歩道に乗り上げて駐車し、歩行者や車椅子の通行を妨害したりするのです。
認知機能の低下から、ルール違反をしている自覚に乏しいのが問題。
運転マナーが守れなくなったら、公共の場での運転は控えるべきサインかもしれません。
まとめ
シニアの地方移住は、医療や交通の便が悪い田舎や過疎地ではリスクが高すぎるでしょう。
自然環境に恵まれながら都市機能も整った、地方都市がオススメです。
移住者を歓迎する自治体の支援制度を活用し、医療と福祉が充実した街を選ぶのがポイント。
ひとり暮らしのシニアは、近所付き合いや身内のサポートが得られる地域を選びましょう。
車なしでの生活が成り立つかどうかを見極め、運転に自信がなくなったら免許返納も視野に入れることが大切。
シニアの地方移住はくれぐれも慎重に。