「都会より田舎の方がひきこもりになりやすい」は本当か?

「都会より田舎の方がひきこもりになりやすい」は本当か?

近年、ひきこもりは若者だけでなく、中年の社会問題としても注目されています。

しかし、その原因や背景については、まだ謎に包まれている部分が多いのが実情です。

そこでこの記事では、元ひきこもりの視点から、「ひきこもりになりやすい人の特徴」と「ひきこもりを助長する環境」に焦点を当てて、ひきこもり問題の本質に迫っていきます。

ひきこもりは都会より田舎で多いのでしょうか?

それとも、田舎か都会かは関係ないのでしょうか?

ひきこもりの原因と向き合うことで、私たち一人一人にできることが見えてきます。

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1. ひきこもりの定義と現状

ひきこもりとは、仕事や学校に行かず、かつ家族以外の人との交流をほとんど断って、6ヶ月以上にわたって自宅に引きこもっている状態を指します。

内閣府の調査によると、15歳から64歳までのひきこもり状態の人は全国で推計146万人に上るとされています。

長期化、高年齢化が進み、ひきこもりは今や特定の世代の問題ではなくなっています。

ひきこもりの背景には、不登校やニート、社会への不適応など、複合的な要因が絡み合っています。

ひきこもりの多くは、社会や人間関係でのストレスから逃れるために自宅に閉じこもっている状態と言えるでしょう。

1-1. ひきこもりの原因は人それぞれ異なる

ひきこもりの原因は十人十色で、一概には言えません。

学校でのいじめや不登校がきっかけの人もいれば、就職失敗や職場不適応から引きこもる人もいます。

私は退職がきっかけでひきこもりになりました。

統合失調症などの精神疾患が背景にあるケースや、発達障害の特性からコミュニケーションが苦手で引きこもるパターンもあります。

親との確執や家庭環境の問題から、外の世界に出られなくなるケースも少なくありません。

ひきこもりになる理由は人それぞれですが、社会でのつまずきや挫折が引き金になっているケースが多いのは事実です。

1-2. ひきこもりは個人の心の問題だけではない

ひきこもりを個人の心の問題と捉えがちですが、それだけでは不十分です。

ひきこもりの増加には、社会や家庭環境の変化も大きく影響しています。

成績や学歴至上主義の教育や、正社員という画一的な働き方を求める風潮は、一定の枠にはまらない人々を疎外してきました。

家族形態の変化により、子育てを母親に丸投げする風潮も広がっています。

ひきこもりを生まない社会を作るには、画一的な価値観を見直し、多様性を認め合う柔軟さが不可欠と言えるでしょう。

1-3. ひきこもりは社会全体で取り組むべき課題

ひきこもり問題は、本人と家族だけの問題ではありません。

社会からドロップアウトした人々をそのまま放置すれば、将来的に社会保障費の増大など、深刻な影響が出てくることは必至です。

ひきこもりの背景にある社会的な要因を見直し、多様な生き方を認め合える環境を整備していくことが重要です。

福祉や就労支援など、ひきこもりの人が社会とつながるための公的なサポート体制の強化も不可欠でしょう。

同時に、ひきこもりを生まない予防策として、学校や職場でのメンタルヘルス対策にも力を入れるべきです。

この章の要点
  • ひきこもりは15~64歳の115.3万人に上り、長期化・高年齢化が進んでいる
  • ひきこもりの原因は人それぞれ異なるが、社会でのつまずきや挫折が引き金になるケースが多い
  • ひきこもりは個人の問題を超えた社会課題であり、社会全体で取り組む必要がある

2. ひきこもりになりやすい人の3つの特徴

ひきこもりの原因は人それぞれ異なりますが、ひきこもりになりやすい人に共通する特徴があります。

ひきこもる人の多くは、真面目で繊細な性格の持ち主だと言われています。

また、対人関係を苦手とし、社会性やコミュニケーション能力に乏しいケースが目立ちます。

自己肯定感が低く、失敗を恐れるあまり新しいことにチャレンジできない傾向もあります。

ここではひきこもりになりやすい人の特徴を3つ挙げてみましょう。

2-1. 真面目で完璧主義の傾向が強い

ひきこもりの人の多くは、真面目で几帳面、完璧主義の傾向が強いと言われています。

物事を白黒はっきりさせたがる傾向があり、些細な失敗も許せない厳しさを持っています。

周囲からの評価を気にするあまり、他人の期待に応えようと必死になってしまいます。

しかし、完璧を求めるがゆえに現実とのギャップに悩み、挫折感を味わうケースが少なくありません。

真面目さや几帳面さは素晴らしいですが、融通の利かなさは社会適応を妨げになります。

2-2. 対人関係やコミュニケーションが苦手

ひきこもりの人は総じて、対人関係やコミュニケーションが苦手な傾向があります。

人付き合いの幅が狭く、学校や職場での人間関係がうまく築けないケースが目立ちます。

相手の感情を読み取ることが難しかったり、言葉数が少なくて会話が弾まなかったりと、コミュニケーションに困難さを抱えている人が多いようです。

対人トラブルや孤立から、社会参加への意欲を失ってしまう人もいます。

ひきこもりの背景には、発達障害の特性が関係しているケースも少なくありません。

2-3. 自己肯定感が低く失敗を恐れる

ひきこもりの人の多くは、自己肯定感が低く、自分に自信を持てない傾向にあります。

プライドが高い反面、自分を認められず、他人の評価ばかりを気にしてしまいます。

周りと比べて劣等感を抱きやすく、失敗を過剰に恐れる傾向も見受けられます。

新しいことにチャレンジする勇気が持てず、安全圏から一歩も踏み出せなくなってしまうのです。

自己肯定感の低さは生きづらさにもつながります。

この章の要点
  • 真面目で完璧主義の傾向が強く、融通が利かない
  • 対人関係やコミュニケーションが苦手で、社会参加への意欲を失いがち
  • 自己肯定感が低く、失敗を過剰に恐れ、新しいことにチャレンジできない

3. ひきこもりは田舎と都会どちらで多い?

ひきこもりは都会の方が多いイメージがありますが、実態はどうなのでしょうか。

内閣府の調査では、ひきこもりの割合は三大都市圏より地方の方が高いという結果が出ています。

都会に比べて地方は、多様な生き方を許容する風土に乏しいのかもしれません。

進学や就職で都会に出る人が多く、田舎に残った人の選択肢が限られてしまう現実もあります。

3-1. 田舎は多様性に乏しく居場所を見つけにくい

田舎は都会に比べて価値観が均一で、多様性に乏しい傾向にあります。

「皆が皆、同じような人生を歩むべき」という同調圧力が強く、個性的な生き方が受け入れられにくい土壌があるのです。

周囲と合わせることに疲れ、自分らしさを発揮する居場所が見つけられない人もいるでしょう。

行政や支援団体の取り組みも都会に比べて遅れがちで、SOSを発信しづらい状況にあります。

閉塞感から逃れるようにひきこもるケースは少なくないのです。

3-2. 田舎は選択肢が限られ、やりたいことができない

進学や就職をきっかけに、多くの若者が田舎から都会へと流出していきます。

大学や専門学校は都会に集中し、仕事の選択肢も豊富です。

やりたいことを見つけられず、将来への展望が描けない若者は、田舎に取り残されてしまうのです。

地元に魅力的な仕事がないことで無気力になったり、意欲を失ったりするケースは多い。

「このままじゃいけない」と思っても、打開策が見つけられず、ひきこもるしかない現実があるのです。

3-3. 田舎の人間関係は濃密で息苦しさを感じやすい

都会に比べて田舎は、人間関係が濃密で親密度が高いと言われています。

顔見知りが多く、他人の目を気にせざるを得ない環境は、息苦しさを感じさせるでしょう。

「あの家の子は最近出てこないね」と陰口を叩かれたり、出歩くたびに「どこ行くの?」と根掘り葉掘り聞かれたりと、プライバシーのなさが心理的負担になります。

人付き合いが苦手な人にとって、田舎の人間関係は生き辛さの最大の原因かも。

人目を避けるように、自宅に引きこもってしまう人がいるのも無理はありません。

この章の要点
  • 内閣府の調査で、ひきこもりは都会より地方の割合が高いことが判明
  • 田舎は価値観が均一で多様性に乏しく、居場所を見つけにくい
  • 進学や就職の選択肢が限られ、将来に希望が持てない若者が引きこもりがち

4. ひきこもりは実家暮らしに多い理由

ひきこもりの多くは実家暮らしであり、親と同居しているケースが目立ちます。

内閣府の調査でも、ひきこもりの約8割が実家暮らしという結果が出ています。

なぜ、ひきこもりは実家暮らしに多いのでしょうか。

家賃や光熱費がかからず、親に頼って生活できる環境が、ひきこもりを長引かせる一因と考えられます。

一人暮らしに比べて、実家は精神的にも経済的にも居心地が良いのかもしれません。

4-1. 一人暮らしだと社会とのつながりを保ちやすい

一人暮らしの場合、家賃や食費を稼がなければ生活が成り立ちません。

最低限の社会参加は必要不可欠で、職探しや就労を避けて通ることはできません。

一方、実家暮らしだと親に経済的に依存できるため、社会とのつながりを絶ちやすくなります。

「働かざるもの食うべからず」という危機感が薄れ、外に出るモチベーションが湧きにくいのです。

自立への意欲が失われ、ひきこもり状態が長期化するケースは少なくありません。

4-2. 親の過干渉や過保護がひきこもりを助長する

ひきこもりの家庭環境を見ると、親の過干渉や過保護が目立つと言われています。

子供の自主性を尊重せず、親の価値観を押し付ける「支配的な親」が多いのが特徴です。

幼少期から細かく指図され、自分で考えて行動する力が育っていません。

困ったときはすぐに親に助けを求め、自立心が芽生えないまま大人になるのです。

また、働かなくても親が養ってくれるという安心感が、ひきこもりから抜け出す原動力を奪ってしまいます。

4-3. 実家は心理的安全基地になりやすい

ひきこもりの人にとって、実家は心理的安全基地になりやすい環境だと言えます。

社会の荒波に揉まれた心身を休めるために、実家に戻る人は少なくありません。

アパートの一室と違い、実家には子供時代を過ごした思い出の品々があります。

自分を丸ごと受け止めてくれる実家は、居心地の良さと安心感を与えてくれるのです。

しかし、あまりに安住しすぎると、社会復帰への一歩が遠のく恐れもあります。

この章の要点
  • ひきこもりの約8割が実家暮らしで、親への経済的依存が目立つ
  • 一人暮らしに比べて実家は、社会とのつながりを絶ちやすい環境
  • 親の過干渉・過保護な態度がひきこもりを助長する一因に

5. ひきこもりを生む家庭環境の問題点

家庭環境がひきこもりを生む土壌になっているケースは少なくありません。

親子関係の悪化や家族のコミュニケーション不足が、ひきこもりのきっかけになることも。

また、親の過干渉や過保護な態度が子供の自立心を阻害し、ひきこもりを助長する側面もあります。

家族それぞれが役割を果たせず機能不全に陥ると、ひきこもりが起こりやすくなるのです。

ここでは、ひきこもりを生みやすい家庭環境の問題点を3つ挙げてみましょう。

5-1. 親子のコミュニケーション不足が問題に

ひきこもりの家庭を見ると、親子のコミュニケーションが希薄なケースが目立ちます。

互いの思いを伝え合う関係性が築けておらず、会話が成立していないのが特徴的。

子供の悩みに寄り添えず、心の叫びに気づいてあげられない親は少なくありません。

親子の信頼関係が築けていないと、子供は心を閉ざし、自分の殻に閉じこもってしまいます。

子供の心の声に耳を傾け、理解しようと努めることが、ひきこもり防止の第一歩と言えるでしょう。

5-2. 家族の役割分担がうまくできていない

ひきこもりが起こる家庭では、家族の役割分担がうまくできていないことが多いようです。

父親不在や母親の過干渉など、家族のバランスが崩れているケースが目立ちます。

父親が家事や育児に非協力的だと、母親に負担が集中してしまいます。

母親の精神的疲弊が子供に影響し、ひきこもりのリスクが高まるのです。

家族みんなで支え合い、それぞれの役割を果たすことが、健全な家庭環境づくりには欠かせません。

5-3. 家族の信頼関係が築けていない

ひきこもりの背景には、家族の信頼関係の希薄さがあることも少なくありません。

親子や兄弟姉妹の間に心の壁があり、お互いを理解し合えていない状態です。

家族の絆が弱く、困ったときに頼れる存在がいないと、孤立感を抱えてしまいます。

一人で問題を抱え込み、ひきこもるしかない状況に追い込まれるのです。

家族の結びつきを深め、互いに支え合える関係性を築くことが何より大切だと言えます。

この章の要点
  • 親子のコミュニケーション不足がひきこもりの一因に
  • 家族の役割分担の偏りや母親の負担増がリスクを高める
  • 家族の信頼関係の希薄さが孤立感を生み、ひきこもりを助長

6. 無職でも生活できる環境がひきこもりの背景に

ひきこもりの増加には、「無職でも生活できる環境」が背景にあると指摘されています。

バブル崩壊後、終身雇用が崩れ、非正規雇用が増加したことで、若者の雇用環境は悪化の一途をたどりました。

アルバイトを掛け持ちしても生活が苦しく、将来に希望の持てない若者が増えています。

やりたいことも見つからず、働く意欲を失ってニートになるケースは少なくありません。

その一方で、親の年金や貯金を当てにして、働かずに暮らす若者も目立つようになりました。

6-1. ニートやフリーターを受け入れる社会風潮

バブル崩壊後、ニートやフリーターが急増し、社会問題化しました。

働かない若者を批判する声もありましたが、同情的に受け止める風潮も広がっていきます。

いずれ働き始めるだろうと楽観視する親も多く、ニートを容認する空気が蔓延しました。

その結果、就職活動をしないまま年齢を重ね、ひきこもりに移行するケースが後を絶ちません。

ニートを甘やかさず、「働くこと」の大切さを伝えていく必要があるでしょう。

6-2. 働かなくても困らない環境がひきこもりを助長

ひきこもりの背景には、「働かなくても困らない環境」があることも見逃せません。

親の年金や貯金を当てにすれば、職に就かなくても最低限の生活は送れます。

親の脛をかじる「パラサイトシングル」が話題になるなど、大人の子供への甘やかしは限度を超えつつあります。

働かずに親に依存し続ける若者を「ひきこもり予備軍」と呼ぶ声もあるほどです。

楽に生きていけるからこそ、現状から抜け出そうという気持ちが湧かないのでしょう。

6-3. 社会の歪みがひきこもりを生んでいる

ひきこもりの増加は、日本社会の歪みを反映していると言えるでしょう。

少子高齢化による労働力不足は深刻化しているにもかかわらず、若者の雇用環境は厳しさを増すばかり。

年功序列・終身雇用の崩壊により、将来への見通しが立てづらくなっているのが現状です。

格差の広がりによって、自分の居場所を見失った若者も増えています。

社会のひずみを正すことなくして、ひきこもり問題の解決はありません。

この章の要点
  • バブル崩壊後、ニートを容認する社会風潮が広がった
  • 親の年金や貯金があれば働かずに暮らせる環境がひきこもりを助長
  • 若者の雇用環境の悪化など社会の歪みがひきこもりを生んでいる

7. 親子の歪んだ関係がひきこもりを生む

ひきこもりの背景には、親子の歪んだ関係があることも見逃せません。

過干渉な親や、逆に無関心な親との軋轢から、子供が心を閉ざしてしまうケースが少なくないのです。

親の期待に応えようと必死になるあまり、自分を見失ってしまう子供もいるでしょう。

また、親への反発心から、あえて「ダメな自分」を演じ続ける若者もいます。

親子の信頼関係なくして、ひきこもりからの脱却はありえません。

7-1. 親の過干渉が子供の自立心を阻害する

ひきこもりの親を見ると、子供に過干渉するタイプが目立ちます。

些細なことにも口を出し、子供の自主性を尊重しない親は少なくありません。

過保護に育てられた子供は、自分で物事を判断し行動する力が育ちにくいのです。

大人になっても親に依存する癖がついてしまい、ひきこもりに陥りやすくなります。

子供の主体性を引き出し、自立心を育てることが、ひきこもり予防には不可欠だと言えるでしょう。

7-2. 親の無関心が子供を孤立させる

一方で、子供に無関心な親もひきこもりを生む原因になります。

わが子の心の叫びに耳を傾けず、悩みに寄り添おうとしない。

そんな親のもとで育った子供は、自分の居場所を見失いがちです。

親に愛されていると実感できず、自己肯定感を持てないまま大人になるのです。

承認欲求が満たされないことで孤立感を強め、ひきこもるリスクは高まると言えます。

7-3. 親子の信頼関係を築くことが何より大切

ひきこもり防止には、親子の信頼関係を築くことが何より大切です。

子供の話に耳を傾け、その気持ちを受け止めることから始めましょう。

叱咤激励だけでなく、子供をありのままに認める姿勢も必要です。

親子喧嘩を恐れず、率直に思いを伝え合える関係性を目指しましょう。

何があっても味方でいることを、言葉と態度で示し続けることが大切ですよ。

この章の要点
  • 親の過干渉が子供の自主性を奪い、自立心を阻害する
  • 親の無関心は子供を孤立させ、自己肯定感を持てなくさせる
  • ひきこもり防止には親子の信頼関係の構築が何より大切

まとめ

いかがでしたか?

都会と田舎のどちらがひきこもりになりやすいのかについて考えてきました。

内閣府の調査では、ひきこもりの割合は都会より地方で高いことが分かりました。

田舎には多様性を許容しにくい閉鎖的な風土があり、ひきこもりを生みやすい土壌があるのかもしれません。

都会か田舎かという環境要因も無視できませんが、ひきこもりを助長する最大の原因は「家庭」だと言えるでしょう。

ひきこもりの人の多くは実家暮らしで、親への経済的・精神的依存が見受けられます。

家族のコミュニケーション不足や過干渉、役割分担の偏りなど、家庭のあり方を見直す必要があります。

その一方で、ひきこもりの増加は社会全体の歪みを反映しているとも言えます。

若者の不安定な雇用環境、無職を許容する社会の風潮、格差の拡大など、「ひきこもらざるを得ない状況」を生んでいるのです。

ひきこもりは個人や家庭の問題ではなく、社会全体で取り組むべき課題だと言えるでしょう。

多様な生き方、働き方を認め合える社会。

悩みを共有し、支え合える地域コミュニティ。

ひきこもりを生まないために、社会のあり方を問い直す時期に来ているのかもしれません。

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