「認知症の人は都会より田舎の方が暮らしやすい」は本当か?

「認知症の人は都会より田舎の方が暮らしやすい」は本当か?

認知症の人にとって、田舎と都会では暮らしやすさに違いがあるのでしょうか。

認知症は高齢者に多い病気で、記憶力の低下や判断力の衰えなどの症状が見られます。

一般的には、環境の変化に順応しにくくなるため、住み慣れた場所で暮らし続けることが大切だと言われています。

しかし、田舎と都会では生活環境に大きな違いがあります。

果たして認知症の人は、どちらの環境が暮らしやすいのでしょうか?

この記事では、認知症の特徴と、田舎と都会それぞれのメリットとリスクを詳しく解説します。

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1. そもそも認知症とは?3つの特徴で理解する

認知症とは、さまざまな原因で脳の細胞が損傷を受けることにより、認知機能が低下した状態を指します。

代表的な症状としては、以下の3つが挙げられます。

1-1. 記憶障害で新しい情報が覚えられない

認知症では、新しい出来事を覚えることが難しくなります。

同じ質問を何度もしたり、大切な約束を忘れてしまったりすることがあります。

一方で、昔の記憶は比較的保たれる傾向にあります。

そのため、なじみのある環境で暮らすことが重要だと考えられています。

1-2. 実行機能障害で段取りが立てられない

認知症になると、計画を立てて物事を進める力が低下します。

料理の手順が分からなくなったり、服の着る順番が理解できなくなったりします。

そのため、家事や身の回りのことに手助けが必要になります。

周囲のサポートを得やすい環境であることが大切です。

1-3. 見当識障害で時間や場所の感覚がなくなる

認知症では、今が何月何日なのか、自分がどこにいるのかが分からなくなります。

このような見当識障害により、一人で外出して迷子になるリスクが高まります。

道に迷っても助けを求められる場所で暮らせるかどうかが、安全な生活を送るうえで重要なポイントとなります。

この章の要点
  • 認知症は記憶障害、実行機能障害、見当識障害を伴う
  • なじみのある環境で暮らすことが大切
  • 周囲のサポートが得られやすい場所を選ぶことが重要

2. 認知症になりやすい人の3つの特徴とは?

では、認知症になりやすい人にはどのような特徴があるのでしょうか。

以下の3点が主なリスク因子だと考えられています。

2-1. 加齢が最大のリスク因子

認知症の最大の危険因子は、高齢であることです。

65歳以上の高齢者では、4人に1人が何らかの認知症を患っていると言われています。

加齢に伴い、脳の萎縮や血流の低下が進行することが原因です。

そのため、高齢化率の高い地域では、認知症の人の割合も高くなる傾向にあります。

2-2. 生活習慣病の人は要注意

認知症のリスクを高める病気としては、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病が挙げられます。

これらの病気は、血管を傷つけることで脳への血流を低下させ、認知機能の低下を招きます。

生活習慣病の予防と治療は、認知症を防ぐうえでも非常に大切です。

2-3. 運動不足の人は注意が必要

運動不足も、認知症の危険因子の一つです。

適度な運動は、脳の血流を改善し、脳細胞の新生を促す効果があります。

一方、運動不足は認知機能の低下を招く恐れがあります。

高齢者は体を動かす機会が減りがちなので、意識して運動を取り入れることが大切です。

この章の要点
  • 高齢であることが最大のリスク因子
  • 生活習慣病の予防・治療が大切
  • 運動不足にならないよう注意が必要

3. 認知症になりづらいのは田舎と都会どっち?

次に、認知症の発症リスクという観点から、田舎と都会の違いについて見ていきましょう。

結論から言うと、認知症になりづらいのは都会だと考えられています。

その理由について詳しく解説します。

3-1. 都会は受診率が高い

認知症の予防と早期発見には、定期的な健康診断が欠かせません。

この点、都会では医療機関へのアクセスが良いため、健康診断を受ける人の割合が高い傾向にあります。

認知症の兆候を早い段階でキャッチできれば、進行を遅らせる治療を始められます。

都会に住む高齢者は、認知症の早期発見・早期治療の恩恵を受けやすいと言えるでしょう。

3-2. 都会は社会参加の機会が多い

社会参加は、認知症の予防に効果があることが分かっています。

人と交流したり、新しいことを学んだりすることで、脳が刺激されるためです。

都会では、趣味のサークルや生涯学習の講座など、社会参加の機会が豊富に用意されています。

高齢者が生きがいを持って暮らしやすい環境だと言えます。

3-3. ただし田舎には田舎ならではの利点も

一方で、田舎には都会にはない利点もあります。

例えば、自然に恵まれた環境は、ストレスの軽減に役立ちます。

また、地域のつながりが強いため、見守りや声かけを通して認知症の早期発見につながる可能性もあります。

総合的に見れば都会の方が認知症の発症リスクは低いと考えられますが、一概に田舎が不利とは言い切れません。

この章の要点
  • 認知症になりづらいのは都会
  • 都会は受診率が高く、早期発見・早期治療につながりやすい
  • 都会は社会参加の機会が多い
  • ただし田舎にも田舎なりの利点がある

4. 認知症になったら暮らしやすいのは田舎と都会どっち?

では、認知症を発症してしまった場合、どちらの環境で暮らす方が良いのでしょうか。

結論から言うと、一概には言えません。

それぞれの環境に、メリットとデメリットがあるためです。

4-1. 都会は医療・介護サービスが充実

都会の大きな利点は、医療機関や介護サービスが充実していることです。

認知症の人は、定期的な通院やリハビリが欠かせません。

在宅での介護サービスを利用しやすいのも、都会ならではの強みです。

必要なサポートを受けながら、住み慣れた自宅で生活を続けられるでしょう。

4-2. 田舎は自然と地域のつながりが魅力

一方、田舎の最大の利点は、豊かな自然環境です。

ストレスの少ない生活は、認知症状の進行を遅らせる効果が期待できます。

また、地域とのつながりの強さも、田舎暮らしの魅力です。

近所づきあいを通して、認知症の人の異変に気付きやすいと考えられます。

4-3. 本人の状態と家族の事情次第

結局のところ、認知症の人にとって最適な環境は、本人の状態と家族の事情によって異なります。

症状が軽ければ、田舎でのんびり過ごすのも良いかもしれません。

介護の必要性が高まれば、都会の医療・介護サービスに頼るのが賢明でしょう。

一人ひとりに合った環境を選ぶことが何より大切です。

この章の要点
  • 認知症になったら田舎と都会のどちらが良いかは一概に言えない
  • 都会は医療・介護サービスが充実している
  • 田舎は自然と地域のつながりが魅力
  • 本人の状態と家族の事情に合わせて選ぶことが大切

5. 認知症の人が田舎で暮らす3つのリスクとは?

認知症の人が田舎で暮らす場合、以下の3つのリスクがあります。

5-1. 医療機関へのアクセスが悪い

田舎では、医療機関が少なく、アクセスが悪いことが多いです。

認知症の人は、症状の進行に合わせて治療方針を調整する必要があります。

しかし、通院が難しい環境では、適切な医療を受けられない恐れがあります。

症状が悪化する前に、受診できる体制を整えておくことが大切です。

5-2. 介護サービスが不足している

介護サービスの不足も、田舎暮らしの大きな課題です。

デイサービスや訪問介護など、在宅介護を支えるサービスが十分に整っていないことがあります。

家族の負担が大きくなり、介護疲れを招く恐れがあります。

介護サービスが利用できるかどうかを、事前に確認しておく必要があります。

5-3. 徘徊すると危険が大きい

認知症の人は、徘徊により行方不明になるリスクがあります。

都会なら人通りが多いため、助けを求めることができますが、田舎ではそうもいきません。

田舎特有の、川や崖などの危険箇所も心配です。

見守りが必要ですし、徘徊しても安全に過ごせる環境づくりを心がけましょう。

この章の要点
  • 田舎は医療機関へのアクセスが悪い
  • 介護サービスが不足している場合がある
  • 徘徊すると危険が大きい

6. 認知症の人が都会で暮らす3つのリスクとは?

一方、認知症の人が都会で暮らす場合のリスクは以下の3つです。

6-1. 事故に遭うリスクが高い

都会は車や自転車の往来が激しいため、認知症の人が事故に巻き込まれやすい環境です。

横断歩道の信号を守れなかったり、車道に飛び出したりするリスクが高まります。

また、エスカレーターやエレベーターの操作にも注意が必要です。

外出時は付き添いが欠かせません。

6-2. 徘徊して遠くまで行ってしまう

都会は、電車やバスなどの公共交通機関が発達しています。

認知症の人が一人で外出し、乗り物を使って遠くまで行ってしまうリスクがあります。

田舎なら行ける範囲が限られますが、都会ではそうはいきません。

早期発見のためにも、外出時は必ず付き添うことが大切です。

6-3. 閉じこもりがちになる

都会は便利な半面、人付き合いが希薄になりがちな環境です。

認知症になると、外出を控えて家に閉じこもりがちになることがあります。

すると、ますます認知機能が低下してしまう悪循環に。

地域とのつながりを持ち、外出する機会を積極的に作ることが大切です。

この章の要点
  • 都会は事故に遭うリスクが高い
  • 徘徊して遠くまで行ってしまう恐れがある
  • 閉じこもりがちになる可能性がある

7. 認知症の人が安心して暮らせる社会を目指して

認知症の人が安心して暮らせる社会を作るためには、地域全体で支える体制づくりが欠かせません。

行政や医療機関、介護サービス事業者などが連携し、切れ目のない支援を提供することが求められます。

同時に、地域住民ひとりひとりが認知症について正しく理解し、できる範囲で手助けすることも大切です。

認知症サポーター養成講座などを通して、支援の輪を広げていくことが望まれます。

7-1. 認知症に優しい地域づくりのポイント

認知症に優しい地域づくりのポイントは以下の3つです。

  • 認知症の人の声に耳を傾け、ニーズを把握する
  • 医療・介護・生活支援が一体的に提供される体制を整える
  • 認知症への理解を深め、地域で見守り合う意識を醸成する

7-2. 田舎と都会、それぞれの強みを生かした対策を

田舎と都会では、認知症を支える社会資源の状況が異なります。

それぞれの地域特性を踏まえ、強みを生かした対策を講じていくことが重要です。

例えば、都会では医療・介護サービスを充実させつつ、町内会などを通して地域のつながりを強化するなどの工夫が考えられます。

一方、田舎では自治会を中心に見守りや声かけを行いつつ、遠隔診療などを活用して医療アクセスを改善していくことが求められるでしょう。

7-3. 認知症の人も家族も、地域の支えがあれば安心

認知症は、本人だけでなく、家族にとっても大きな不安を伴う病気です。

どこに住んでいても必要な支援が受けられる地域づくりを目指すことで、安心して生活を送れる環境を整えていくことが大切です。

行政任せにするのではなく、地域の力を結集して取り組むことが何より重要。

優しさと思いやりの心を持って、認知症の人と家族に寄り添える社会をつくっていきましょう。

この章の要点
  • 地域全体で支える体制づくりが必要
  • 田舎と都会、それぞれの強みを生かした対策を
  • 地域の支えがあれば、認知症の人も家族も安心して暮らせる

まとめ

いかがでしたか?

認知症の人は、田舎と都会のどちらが暮らしやすいかを考えてみました。

発症リスクは都会の方が低い一方で、認知症になってからは一概にどちらが良いとは言えない状況です。

それぞれの地域特性を踏まえ、本人や家族の状況に合わせて環境を選ぶことが大切だと言えます。

住む場所に関わらず、地域全体で認知症の人を支える体制づくりが何より重要。

行政だけでなく、地域住民ひとりひとりが認知症への理解を深め、できることから支援の輪に加わっていきましょう。

あなたの些細な行動が、認知症の人と家族の大きな助けになるのですから。