強迫性障害(OCD)に悩んでいる人へ。
近年、マインドフルネス瞑想が強迫性障害の改善に効果があると注目を集めています。
この記事では、マインドフルネス瞑想が効果的な理由と、正しい実践法をご紹介。
「マインドフルネスの効果が感じられない」とならないよう、この機会に理解を深めましょう。
自分は何にストレスを感じているのか?
マインドフルネスを取り入れてどうなりたいのか?
イメージしながら読んでみてください。
強迫性障害の不安に振り回されない、穏やかな心を目指しましょう。
1. 強迫性障害の特徴と従来の治療法の限界
強迫性障害(OCD)は、不安や恐怖に関連した強迫観念と、それを和らげるための強迫行為を特徴とします。
手洗いや確認行為を何度も繰り返したり、不安な考えが頭から離れなかったりと、日常生活に大きな支障をきたす病気。
従来の治療法には薬物療法や認知行動療法がありますが、症状が慢性化したり再発したりすることも多く、新たなアプローチが求められています。
1-1. 強迫観念に振り回される辛さ
OCDでは、汚染や確認への強迫観念に支配され、現実的ではない不安に振り回されます。
例えば、少し手が汚れただけで何時間も手を洗い続けたり、ドアに鍵をかけたか何度も確認したりと、強迫観念から逃れられません。
理不尽な不安に襲われ、自分でも止められない行動のループに陥ると、自信を失い絶望感に苛まれるでしょう。
1-2. 薬物療法と認知行動療法の効果と限界
OCDの治療には、セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などの薬物療法と、認知行動療法が用いられます。
薬はOCD症状を和らげる働きがありますが、副作用のリスク、効果は個人差が大きいのが難点。
一方、認知行動療法では不安への過剰反応を修正する訓練をしますが、実際に不安を感じる場面に何度も直面するのはハードルが高く、治療を継続できない人も少なくありません。
1-3. 新たなアプローチの必要性
OCDは複雑で多様な症状を示すため、薬物療法と認知行動療法だけでは十分でない場合もあります。
症状が長期化したり、再発を繰り返したりするケースでは、従来の治療法と併用しながら、新たなアプローチを取り入れることが望ましいでしょう。
そこで注目されているのが、マインドフルネス瞑想。
脳機能にも働きかけるマインドフルネス療法は、OCDの問題に迫る可能性を秘めています。
2. マインドフルネス瞑想とは何か
マインドフルネス瞑想は、今この瞬間の体験に意図的に意識を向け、評価や判断をせずに観察する方法。
呼吸に意識を集中させたり、身体感覚や思考、感情に気づきを向けたりしながら、めまぐるしく変化する心の動きを静かに見守ります。
批判や反応はせず、ただ観察するのです。
これは「気づきの訓練」で、何気ない日常の中にも新鮮な発見があると気づけば、人生はより豊かになります。
2-1. 仏教瞑想が心理療法に応用された経緯
そもそもマインドフルネスは仏教瞑想に由来しますが、1970年代以降、欧米の心理学者らによって心理療法に応用されるようになりました。
その先駆けとなったのが、マサチューセッツ大学医学部のジョン・カバットジン博士です。
カバットジン博士は、仏教の知見を現代科学の観点から再解釈し、誰もが実践できる8週間のプログラム「マインドフルネス・ストレス低減法(MBSR)」を開発。
今では、うつ病や不安障害、ストレス関連疾患など、様々な症状の改善に役立てられています。
2-2. 脳科学や心理学から見たマインドフルネスの効果
マインドフルネス瞑想は、脳機能にも良い影響を与えることが最新の脳科学研究で明らかになっています。
瞑想を続けることで、ストレス反応に関わる扁桃体の活動が弱まり、前頭前野の活動が高まると報告されています。
つまり、ネガティブな感情の抑制とコントロールがうまくなる可能性があるのです。
心理学の観点からは、意図的な気づきを通して、思考や感情をあるがままに受け入れる態度を育むことができます。
それが、心の柔軟性や調整力を高めることにつながるのです。
2-3. 心の健康と幸福感を高める習慣
マインドフルネスは心身の健康増進と、ウェルビーイング(幸福感)の向上に役立つとされています。
慌ただしい日々の中で、自分の内面に意識を向けるのは大切なこと。
それによって自己理解が進み、心が安定し、穏やかさを取り戻すことができるでしょう。
また、意図的な気づきは自己理解を深め、他者への共感性も育みます。
毎日の瞑想実践は、心の健康と人生の質を高める素晴らしい習慣だと言えます。
では、マインドフルネスはOCDにどのように役立つのでしょうか。
3. マインドフルネス瞑想がOCDに効果がある3つの理由
OCDの中核には、不安や恐怖に過剰に反応し、現実的な判断が難しくなる特性があります。
マインドフルネスは、とらわれやすい心の傾向に気づき、反応しない練習を通して、この特性に直接的に働きかけます。
不安に支配されすぎた心を、より柔軟で適応的な状態へと導いていくのです。
以下の3つの理由から、マインドフルネスはOCDの改善に役立つと考えられています。
3-1. 不安や恐怖への過剰反応を弱める効果
OCDでは些細な不安や恐怖が大きくなり、強迫行為に駆られてしまいます。
マインドフルネスで意図的に不安を観察すると、それが一時的な心の現象にすぎないことに気づけます。
不安に巻き込まれず、適切な距離を保つ練習になるのです。
反応しないでいると、やがて不安は小さくなっていきます。
こうして不安への過剰反応が弱まれば、強迫行為をせずにいられるようになるでしょう。
3-2. 思考と現実の違いを認識できるようになる
強迫観念に振り回されるとき、私たちは考えと現実を混同しがち。
例えば「細菌がついているかも」という不安な考えに囚われ、現実にはほとんどリスクがないのに何度も手を洗ってしまったり。
マインドフルネスでは、思考をあるがまま眺める練習をします。
考えは考えであって、現実そのものではないと認識できるようになるのです。
思考と現実の区別がつけば、強迫観念に惑わされにくくなるでしょう。
3-3. 感情のコントロールが上達する
マインドフルネス瞑想は、感情への気づきを高め、感情をうまくコントロールする力を養います。
怒りや不安、罪悪感など、OCDに伴うネガティブな感情に巻き込まれないよう、一定の距離を置く練習になります。
そうした感情をあるがまま受け止め、いちいち反応しないようになると、感情に振り回されずに行動できるようになります。
「こんな感情が出ているな」と気づけるだけでも、心の安定につながります。
4. OCD患者へのマインドフルネス療法の適用と研究結果
近年、マインドフルネスをOCDの治療に応用する試みが増えてきました。
ストレス低減法に加え、OCDの特性に特化したプログラムも開発されています。
代表例が、「マインドフルネスに基づく認知療法(MBCT)」です。
MBCTは、マインドフルネス瞑想と認知療法を組み合わせた8週間のグループ療法で、うつ病の再発予防に効果が示されています。
OCD版のMBCTでは、強迫思考とそれに伴う不安への対処法を、マインドフルネスの観点から学びます。
4-1. メタ認知への気づきを深める工夫
MBCTの特徴は、思考や感情を対象化してメタ認知(思考についての認知)への気づきを深めること。
思考は思考、感情は感情という捉え方を体験的に学べるよう、実習とグループワークが組み込まれています。
例えば、目を閉じて浮かんでくる強迫的な思考を観察したり、思考がもたらす影響を振り返ったりします。
こうした実習の積み重ねが、強迫観念と自分を切り離す力を高めると期待されています。
4-2. エクスポージャーへの動機づけを高める効果
MBCTには、エクスポージャー(不安場面への暴露)への動機づけを高める効果もあると考えられています。
マインドフルネス瞑想で不安に向き合う力がつくと、エクスポージャーにも前向きに取り組めるようになるでしょう。
MBCTで培った姿勢は、エクスポージャーの効果を高めることにもつながりそうです。
5. マインドフルネス瞑想に取り組む際の5つの注意点
マインドフルネス瞑想を、OCD患者が実践する際は注意点もあります。
症状への効果を実感しやすい一方で、逆効果になるケースもあるためです。
新しい習慣を始める前に、以下の5点に注意しましょう。
正しい理解と練習の積み重ねが、良い結果につながります。
5-1. 強迫行為になりすぎない
マインドフルネス瞑想に熱心に取り組みすぎて、それ自体が強迫行為になってしまう人がいます。
完璧に実践しないといけないと考えたり、一日も休んではいけないと思い込んだりすると逆効果。
あくまでも自分のペースで、無理のない範囲で実践しましょう。
義務感から解放されるのがマインドフルネスの本来の在り方です。
5-2. 不安を消し去ろうとしない
瞑想中は色んな感情が湧いてくるが、その中でも不安は特に厄介に感じるかも。
しかし、不安を消そうと焦っても、かえって大きくなるだけ。
不安も含めて、湧き上がる感情をありのまま見つめる姿勢が大切。
不安をコントロールしようとせず、自然に移り変わるがままに任せてみましょう。
5-3. 他の治療法の代替として考えない
マインドフルネス療法に効果を感じると、他の治療は必要ないと考えたくなるかもしれません。
しかし、OCDの治療において大切なのは、多角的なアプローチの組み合わせ。
薬物療法や認知行動療法と併用しながら、マインドフルネスのスキルを磨くのが賢明でしょう。
どの治療法が自分に合うか、主治医とよく相談しながら進めていきましょう。
5-4. 正しい教示を受ける
マインドフルネス瞑想は一見シンプルそうに見えますが、的確な教示を受けることが上達のコツ。
書籍やネットの情報だけに頼るのではなく、経験豊富な指導者から直接学ぶことも視野に入れて。
グループ指導やオンラインの講座など、自分に合った学び方を選びましょう。
OCDへの効果が実証されているMBCTの受講は特にオススメ。
正しい理解に基づいた練習が、着実なスキルアップにつながります。
5-5. 日常に取り入れる工夫をする
せっかく身につけたマインドフルネスのスキルも、日々の生活に活かさなければ意味がありません。
座って瞑想するだけでなく、日常のあらゆる場面で意識的に実践する工夫が大切。
歯磨きや食事、通勤時間など、ちょっとした隙間時間を使うのもオススメ。
今この瞬間の体験に意識を向ける習慣は、OCDの改善だけでなく、人生の質も高めてくれるはず。
6. マインドフルネス瞑想の基本的な実践法
最後に、マインドフルネス瞑想の基本的な実践法をご紹介しましょう。
呼吸に意識を集中させるシンプルな方法ですので、誰でも今日から始められます。
ポイントは、呼吸の感覚に意識を向け続けること。
雑念が浮かんできたら、優しく意識を呼吸に戻すのです。
1回の練習は3分程度でも大丈夫。
毎日続ける習慣づくりを目指しましょう。
6-1. 姿勢を整える
まず楽な姿勢で座ります。
背筋を伸ばし、肩の力を抜いて、軽く目を閉じましょう。
あぐらや正座が苦手なら、背もたれのある椅子やソファに深く腰かけるのもよいでしょう。
まっすぐ床に座ることにこだわる必要はありません。
体に負担のない、安定した姿勢が何より大切。
6-2. 呼吸に意識を向ける
姿勢が整ったら、意識を呼吸に向けます。
鼻から空気が出入りする感覚や、お腹が緩やかに上下する様子を観察しましょう。
呼吸のリズムを変えたり、コントロールしたりする必要はありません。
ただ、今このときの呼吸の感覚に、意識を向け続けるだけです。
6-3. 雑念を手放して呼吸に戻る
呼吸に意識を向けていると、やがて雑念が湧いてくるでしょう。
考え事や空想、眠気など、心の赴くままに任せましょう。
そして、ふと我に返ったときには、再び優しく意識を呼吸に戻します。
雑念は悪いものではなく、誰にでもある自然なもの。
何度心が逸れても、批判せずに呼吸に立ち返るのです。
1回の瞑想でこれを何度も繰り返す、それが瞑想の本質です。
まとめ
OCDに悩む人にこそ、マインドフルネス瞑想がオススメ。
不安や恐怖心をコントロールする力を高め、強迫観念から自由になるヒントが詰まっています。
正しい理解と実践を心がければ、症状の改善につながるでしょう。
もちろん、瞑想ですべてが解決するわけではありません。
他の治療法とうまく組み合わせながら、長期的に実践を継続することが何より大切。
最初は短い時間から始め、徐々に瞑想の習慣を築いていきましょう。
そして、今この瞬間の体験に意識を向けるマインドフルネスの姿勢を、日常のあらゆる場面に活かしていきましょう。
そうすることで、強迫症状に振り回されない自分を育んでいけるはず。
試しに1回だけ深呼吸してみてください。
心がスッキリしましたよね?
それが辛いOCDの症状を和らげ、日々を大切に生きるための第一歩。
あなたもぜひマインドフルネス瞑想を始めてみてください。