都会と地方の境界線はどこにあるのでしょうか?
人口密度や交通の便、経済活動の規模などによって、その定義は変わってきます。
この記事では、都会と地方の違いについて、具体的な指標を交えてわかりやすく簡単に解説。
あなたの住む地域は、都会なのか地方なのか。
その境界線を知ることで、地域の特性や課題がより明確になるはずです。
それでは、都会と地方の定義を探っていきましょう。
1. 人口密度から見た都会と地方の違い
都会と地方を区別する上で、まず着目すべきは人口密度です。
一般的に、人口密度が高い地域ほど都会的だと言えます。
日本の人口密度は、東京都が最も高く、1平方キロメートルあたり6,168人。
一方、最も低いのは北海道で、1平方キロメートルあたりわずか69人です。
1-1. 政令指定都市の人口の基準
「政令指定都市」とは政令で指定されている人口50万人以上の都市のこと。
政令指定都市以外にも「指定都市」や「政令市」とも呼ばれています。
2024年現在の政令指定都市は20です。
1-2. 人口集中地区(DID)の定義
都市的地域を表す指標として、人口集中地区(DID)があります。
これは、人口密度が1平方キロメートルあたり4,000人以上の国勢調査の基本単位区が隣接し、合計人口が5,000人以上の地域を指します。
2020年(令和2年)の国勢調査では、全国のDID人口は8829万人で、DID面積は国土の3.5%でした。
日本の総人口の約70%が、国土のわずか3.5%のDIDに集中しているのです。
詳細はこちら。
1-3. 過疎地域の人口密度基準
一方、地方の中でも特に人口密度が低い地域は、過疎地域と呼ばれます。
こちらも2020年の国勢調査では、全国の1,719市町村のうち、過疎地域に指定されているのは820市町村。
過疎地は国土面積の59.9%を占めていますが、人口はわずか1,035万人と、全体の8.2%に過ぎません。
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2. 交通インフラから見た都会と地方の違い
都会と地方の違いは、交通インフラの整備状況にも表れています。
都会は鉄道網が発達し、自動車がなくても生活できるのが特徴です。
一方、地方は鉄道が少なく、バスなどの公共交通機関も本数が限られています。
マイカーがないと不便な地域が多いのが実情です。
2-1. 東京の鉄道網の充実度
日本の鉄道網は首都圏に集中しています。
東京都内には、JRや私鉄を合わせて94線、775駅があります。
この高密度な鉄道網は、世界的にも類を見ない東京の特徴と言えるでしょう。
2-2. 地方都市の公共交通の課題
一方で、地方都市はマイカー依存度が高くなっています。
公共交通の本数が少なく、運賃も高いことが、マイカー依存に拍車をかけています。
今後は、コンパクトシティ化を進め、公共交通を軸としたまちづくりが求められます。
2-3. 過疎地域の交通弱者問題
さらに過疎地域では、公共交通そのものが成り立たない状況です。
バス路線の廃止や運転本数の削減が相次ぎ、交通弱者が増えています。
高齢者や学生など、自動車を運転できない人々の移動手段の確保が喫緊の課題です。
デマンド(乗り合い)タクシーや自治体バスなど、地域の実情に合わせた取り組みが必要とされています。
3. 就業構造から見た都会と地方の違い
都会と地方の違いは就業構造にも反映されています。
一般的に、都会は第三次産業の比率が高く、サービス経済化が進んでいます。
一方、地方は第一次産業や第二次産業の比率が相対的に高くなります。
産業構造の違いは、雇用の質にも影響を及ぼしています。
3-1. 東京の第三次産業就業者比率
東京都の就業者に占める第三次産業の比率は、86.1%に達しています。
これは全国平均の67.3%を大きく上回る数字です。
特に、情報通信業や金融業、専門・技術サービス業などの企業が東京に集中しています。
高度な知識やスキルを持つホワイトカラー層の厚い労働市場が、東京の特徴と言えるでしょう。
- 第三次産業とは、商業やサービス業、金融業など、モノを直接生産しない産業のこと
- 第一次産業の農林水産業、第二次産業の製造業に対し、第三次産業は流通やサービスの提供を主な活動とする
- 小売業、飲食業、運輸業、通信業、金融・保険業、医療・福祉、教育、政府サービスなどが該当
- 現代の日本経済は、第三次産業がGDPの7割以上を占める、サービス経済化が進んだ状態にある
3-2. 地方の第一次・第二次産業の現状
地方では、第一次産業と第二次産業の比率が高くなる傾向にあります。
しかし、グローバル化の影響で、地方の製造業は厳しい競争にさらされています。
第一次産業とは、
- 農業、林業、漁業など、自然から直接的に資源を得る産業
- 食料や原材料の生産が主な役割
- 土地や気象条件に大きく左右される
第二次産業とは、
- 製造業、建設業など、原材料を加工して付加価値をつける産業
- 工場での大量生産が特徴
- 技術革新や設備投資が重要な役割を果たす
- 20世紀までの日本経済を牽引してきた
3-3. 過疎地域の就業構造の課題
過疎地域では、就業機会そのものが乏しいのが実情です。
若者の多くは、進学や就職を機に都市部へ流出してしまいます。
残された高齢者は、農林業などの第一次産業に従事するケースが目立ちます。
今後は、地域資源を活かした新たな産業の創出や、テレワークの推進などによる雇用の確保が求められています。
4. 都市機能・生活利便性から見た違い
都会と地方の違いは、都市機能や生活利便性の面でも明らかです。
都会は、商業施設や医療機関、教育機関などが充実しています。
24時間営業の店舗もあり、いつでも必要なものが手に入ります。
一方、地方は都市機能が限定的で、不便を感じる場面も少なくありません。
4-1. 東京の商業集積度
東京都内には、全国の約1割に相当する30,994の小売店舗が集中しています。
これは、全国の市区町村で最多の数字です。
百貨店や大型ショッピングセンターから、専門店や個人経営の店舗まで、あらゆる業態が揃っています。
東京はまさに「買い物天国」と言えるでしょう。
4-2. 地方都市の医療・教育の現状
地方都市でも、一定の医療機関や教育機関は整備されています。
しかし、東京など大都市と比べるとその数は限られています。
特に高度医療を担う大病院や、多様な学部を持つ大学などは地方では少数。
重篤な病気や専門的な研究をするなら、都会に出る必要があるケースが多いのが実情。
4-3. 過疎地域の「買い物難民」問題
過疎地域では、日常の買い物すら困難な「買い物難民」が社会問題化しています。
店舗の撤退や廃業が相次ぎ、日用品を調達する手段が失われているのです。
自家用車を運転できない高齢者などは、食料品の確保にも事欠く事態に直面しています。
移動販売車の運行やネットスーパーの利用など、行政と民間が連携した取り組みが求められます。
5. 自然環境・ゆとりから見た都会と地方の違い
都会と地方の違いは、自然環境の豊かさや生活のゆとりの面でも表れます。
都会は利便性が高い反面、自然が少なく、ストレスフルな環境と言えます。
一方、地方は自然が豊かで、ゆったりとした時間の流れを感じられるのが魅力です。
移住や二地域居住を選ぶ人々が増えているのも、こうした背景があるからでしょう。
5-1. 東京の緑被率の低さ
東京23区の緑被率はわずか24.2%。
コンクリートとアスファルトに囲まれた東京では、身近な自然を感じる機会が限られています。
公園や街路樹など、わずかに残された緑が、都会の中の貴重なオアシスとなっています。
- 緑被率とは、ある地域の面積に対する、森林や草地、農地、公園などの植生で覆われた土地の割合を示す指標
- 都市の環境の質を評価する上で重要な指標の一つ
- 緑被率が高いほど、ヒートアイランド現象の緩和、大気浄化、生物多様性の確保などの効果が期待できる
- 日本の都市では、市街地の拡大に伴い緑被率が年々低下傾向にある
5-2. 地方都市のゆとりと絆
地方都市では、職住近接で通勤時間が短いのが特徴です。
時間的ゆとりがあるため、家族や地域とのつながりを大切にする人が多いのも地方都市の利点です。
都会では希薄になりがちな人間関係が、地方では比較的良好に保たれているのです。
5-3. 過疎地域の豊かな自然環境
過疎地域の最大の魅力は美しい自然環境です。
澄んだ空気、清らかな水、豊かな緑。
都会では味わえない贅沢な自然が残されています。
こうした地域資源を活かし、観光振興や移住促進につなげる地方創生の取り組みが各地で進められています。
6. 文化・価値観から見た都会と地方の違い
都会と地方では、文化や価値観の違いも見られます。
都会では、個人主義的な考え方が主流で、多様性が尊重されています。
一方、地方では伝統や共同体を重んじる意識が根強く残っています。
こうした価値観の違いは、ライフスタイルにも影響を及ぼします。
6-1. 東京の個人主義と多様性
東京では、個人の自由や価値観が尊重される傾向にあります。
他人の目を気にせず、自分らしく生きるスタイルが定着しています。
ファッションや趣味、ライフスタイルも千差万別。
多様な価値観が交錯する東京は、まさに「多様性の都市」と言えるでしょう。
6-2. 地方都市の伝統文化と地縁
地方都市では、古くから伝わる伝統文化や地縁が色濃く残っています。
例えば、京都の祇園祭や仙台の七夕まつりなど、地域に根ざした祭事が今なお盛んに行われています。
また、町内会などの地縁組織も健在で、住民同士のつながりが保たれています。
そうしたコミュニティ意識の強さは、地方都市の特徴と言えるでしょう。
6-3. 過疎地域の自然信仰と助け合い
過疎地域では、自然を敬う信仰心や、住民同士の助け合いの精神が息づいています。
山や川、森には神様が宿ると考え、自然と共生する暮らしが営まれてきました。
また、「向こう三軒両隣」と言われるように、地域ぐるみで助け合う相互扶助の関係が築かれています。
都会では失われつつある、人と自然、人と人とのつながりが、過疎地域には今なお残されているのです。
7. 都会と地方は連携し、互いの強みを活かすべき
ここまで見てきたように、都会と地方にはそれぞれ特徴があります。
利便性や経済力に長けた都会、豊かな自然や人間関係が残る地方。
どちらが良い悪いではなく、それぞれの良さを認め合うことが大切です。
都会と地方が連携し、互いの強みを活かし合う。
そんな共生のあり方が、これからの日本に求められています。
7-1. 地方の魅力で都会の課題を解決
都会の過密や環境問題は、地方の魅力で解決できるかもしれません。
例えば、サテライトオフィスの設置や二地域居住の推進です。
都会の企業が地方に拠点を置き、自然豊かな環境で働く。
都会と地方を行き来する新しいライフスタイルを構築する。
地方の魅力が、都会の課題解決の突破口になるはずです。
7-2. 都会の力で地方の可能性を開く
一方、地方の可能性を開くのに、都会の力が不可欠なのも事実です。
例えば、地場産品のブランディングや販路開拓です。
地方の優れた産品も、都会の感度の高い市場に乗れば、大きく羽ばたけます。
都会のマーケティング手法を地方に取り入れることで、地域経済の活性化につなげられるでしょう。
7-3. 都会と地方の交流がつくる新しい価値
都会と地方は、お互いに良い刺激を与え合える関係です。
都会の人が地方を訪れ、自然の恵みや文化に触れる。
地方の人が都会に出て、新しい知見やネットワークを得る。
双方向の交流を通じて、イノベーションや価値創造が生まれる可能性があります。
都会と地方の垣根を越えた協働が、これからの日本に新しい活力をもたらすことでしょう。
まとめ
都会と地方の境界線は、一概に定義できるものではありません。
人口密度や交通、産業など、様々な指標から総合的に判断する必要があります。
むしろ大切なのは、都会と地方のそれぞれの良さを認め、互いに活かし合っていくこと。
多様な地域の個性が輝く社会を目指し、都会と地方が共に歩んでいく。
そんな地域共生の時代が、もう始まっているのかもしれません。
あなたの住む地域が都会か地方かはさておき、その魅力を再発見してみてはいかがでしょうか。